抄録
血液透析時における末梢血リンパ球サブポピュレーションおよびリンパ球増殖能の変動とその機序について検討を行った. 対象は血液透析患者20名で, 透析膜はcuprophane, cellulose acetate, PMMA (polymethyl methacrylate), EVAL (ethylene vinyl alcohol) の4種類を用いた. 1) リンパ球絶対数はcellulose acetate膜で, 透析15分後に有意の低下がみられた (p<0.05). 2) OKT3陽性細胞はPMMA膜で, 透析15分後に有意の上昇がみられたが (p<0.05), OKT4/OKT8比やOKB1陽性細胞はすべての膜で有意の変動を認めなかった. 3) OKM1陽性細胞はcuprophane膜で, 透析15分後に有意の低下がみられた (p<0.05). 4) リンパ球のPHA反応は透析前に比し, cuprophane膜で, 透析15分後に有意の回復がみられたが (p<0.05), 他の透析膜でも著明な回復を認める例があった. 5) 透析前にPHA反応の比較的良好な群と低い群に分けて回復率の経時的変化をみると, 特に低い群に透析15分後に著明な回復がみられた (p<0.01). 6) PHA反応の低い群においてOKM1陽性細胞の減少率とPHA反応の回復率とに正の相関傾向を認めた. 以上より, 血液透析15分後にみられるリンパ球増殖能の回復は抑制性単球の減少によるものと考えられた.