日本透析療法学会雑誌
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10年以上血液透析症例の骨萎縮と骨代謝関連因子との関係
杉崎 弘章中島 正良国友 哲之輔丸山 京子
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1987 年 20 巻 2 号 p. 147-152

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抄録
166名の透析患者をA群 (10年以上), B群 (5年以上10年未満), C群 (1年以上5年未満), D群 (1年未満) に分類し, microdensitometry (MD) 法による骨萎縮度を, 骨皮質 (MCI), 骨塩量 (BMC) およびそれから求められる総合判定 (BI) により観察した. とくにA, B群については昭和55年からの集積データにより5年間の比較を, C群についても導入時より昭和60年12月までの数年間の比較をpairwiseに行い, 骨病変の進行程度と透析期間との関係を検討した. さらにDesferrioxamine (DFO) 負荷テストによる血中アルミニウム上昇 (ΔAl), その他の骨代謝関連因子として, intact-PTH, 活性ビタミンD3, カルシトニン, 総カルシウム (T-Ca), 無機リン (Pi), ALP等との関係も調べた. 結果は, D→C→B→A群と透析が長期化するのに従い, BIの悪化を認めた. 患者毎に透析期間とBIを比較すると正の相関が認められた. 次にA, B, C群とブロック別に比較すると, C群はA, B群より透析期間が短いにもかかわらず, A, B群と同じBIの悪化を認め, 透析初期1-5年の間に骨萎縮が急速に進行するものと考えられた. 次に骨代謝関連因子との関係では, 活性ビタミンD3濃度はどの時期でも著しく低下していた. i-PTHはC群で正常値を示し, 透析が長期化するのに従い上昇し, 透析期間との間に正の相関を認めた. Alについては透析初期より高く, ΔAlは透析期間と正の相関を認め, 透析の長期化に従いAlの蓄積が進むことが示唆された.
以上のことより, 透析導入初期より活性ビタミンD3の欠乏とAlの蓄積による骨軟化症が存在し, 透析の長期化に従ってi-PTHが上昇し, 線維性骨炎が加わり, 骨萎縮, とくにBIが進行性に悪化してくるものと考えられた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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