日本透析療法学会雑誌
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血漿分離膜を併用した活性炭吸着法による劇症型肝不全の治療
武田 茂幸田部井 薫古谷 裕章山木 万里郎嶋中 公夫進藤 靖夫細井 春久浅野 泰
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1987 年 20 巻 9 号 p. 679-683

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抄録
劇症肝炎の治療として, 現在血漿交換 (PEX), 活性炭吸着法 (HP) が用いられるが, PEXでは血清肝炎, HPでは血小板減少などの合併症がある. 今回我々は血漿分離膜を用いて血漿を分離したのち, 回路内にポンプを組み込み, 活性炭吸着筒に通すplasma-perfusion (PP) により劇症肝炎の治療を試み, 若干の知見を得たので報告する. 方法: 旭メディカル社製の血漿分離膜 (AP-05H, AP-08H) を用い血漿を分離した後, 住友ベークライト社製CR-200, CR-300 (活性炭充填量120g) または日本メディカルサプライ社製のBespore® (活性炭充填量80g) 活性炭吸着筒に通した. 対象は軽度から中等度の肝性昏睡を伴った劇症型の肝不全7例. 効果判定は臨床症状および血液検査, 特にビリルビンとアミノ酸分析によって行った. 結果: ビリルビン減少率は, PEXで35.9±3.7%, PPでは22.9±5.2%であった. また同時に実施したアミノ酸分析では, 分枝アミノ酸であるロイシン, イソロイシン, バリンに比して芳香族アミノ酸であるフェニルアラニン, チロジンでより高い減少率が得られた. 芳香族アミノ酸と分枝アミノ酸の比であるFisher scoreを用いた検討では, PP実施中, 時間経過とともにFisher scoreの上昇を認めた. 抗凝固剤としてヘパリンを使用したが使用量は比較的少量で済み, 血小板減少等の副作用は認められなかった. 結論: 1) 血漿分離膜を用いたPPは血小板減少を起こすことなく, またヘパリン使用量も少なく実施可能であった. 2) ビリルビン減少率は22.9%であり血漿交換にはやや劣るもののHP単独よりはるかに有効と考えられた. 3) 肝性脳症の原因の1つと考えられる芳香族アミノ酸の除去に有効であるなどの利点があり, 劇症肝炎の治療に有用であると思われた.
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