日本透析療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-6211
Print ISSN : 0911-5889
ISSN-L : 0911-5889
京都府下における10年以上の長期透析患者のquality of lifeについて
伊東 三喜雄滝 吉郎曽和 信正松島 宗弘森本 泰介安田 和弘石川 英二上山 秀麿広瀬 由紀久世 益治沢西 謙次浜田 勝生野田 春夫
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 21 巻 11 号 p. 1001-1007

詳細
抄録
京都府下の10年以上の透析患者188名について生活実態調査を行い社会経済的及び医学的の両面より長期透析患者のquality of lifeについて検討した.
全国統計で10年以上の長期透析患者は10.6%であるのに対し, 京都府では13.1%とやや高率であった. 男性144名 (60.6%) 女性74名 (39.4%) で平均年齢48歳, 原疾患は糸球体腎炎が135名 (71.8%) と最も多かった. 183名 (97.3%) が通院透析で, 昼間透析91名, 夜間透析92名と同数であった. 透析回数は週3回が164名 (87.3%) と多いが週2回透析も23名あった.
現在の患者自身の苦痛は骨・関節痛, しびれ感, 腰痛など痛みに関するものが多く, 合併症の骨代謝異常と手根管症候群などの透析アミロイドーシスが増加して来ているのと一致する. 今後は合併症のなかでも骨代謝異常と透析アミロイドーシスに対する対策が必要である. また現在多くの患者が希望していることは透析回数が減り, 透析時間が短くなることであったが, 腎移植の希望者は10.1%と少なかった.
職業, 社会復帰状態, 通院状態, 透析食, 現在の楽しみなどについてアンケート調査した結果, 透析患者は種々な面でのハンディキャップにもかかわらず透析生活に生きがいをみいだし, 積極的に社会復帰に努力している様子が窺えた. しかし現在の透析療法はまだ身体的, 経済的に患者の負担が大きく今後も技術的進歩を強く希望している.
全身状態については患者の自己評価で不良率が20.2%であるのに対し透析担当医師サイドの評価は不良率5.9%と差異を認めた. 医療スタッフサイドから考えているより透析患者自身は肉体的, 経済的に負担を感じており, 今後もこの不良率を下げる努力が透析医療機関に要望される.
著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top