日本透析療法学会雑誌
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血液透析患者にみられる腎癌の現況
1986年アンケート調査報告
石川 勲
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1988 年 21 巻 5 号 p. 465-470

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抄録
透析患者における腎癌発生の現況把握のために1984年2月にひき続き, 1986年2月にアンケート調査を施行した. 全国の透析センター, 泌尿器科教室など1,673施設にアンケートを依頼し, 透析開始後にみられる腎癌発生の有無, 腎癌発見時の年齢, 原疾患, 透析期間, 診断の手がかり, 腎癌の大きさ, 転移やのう胞の有無について調べた. アンケートの回答率は73.3%であった. 今回のアンケート調査によって48例の透析患者に腎癌が見出された. 男性40例, 女性8例と男性に多く, 平均年齢は50.5±10歳, 平均透析期間は83.9±45.2カ月であった. 腎癌の診断についてはCTスキャンによるもの24例, 超音波検査によるもの6例と非侵襲的な診断法によるものが多くみられた. 肉眼的血尿が前景に立ち診断されたものは3例のみであった. 剖検時の診断は9例であった. 腎癌の大きさは平均5.4±3.8 (0.5-15.0)cmであった. 原疾患は32例が慢性糸球体腎炎, 4例が多発性のう胞腎であった. 多のう胞化萎縮腎の合併は, 39例 (81.3%) にみられた. また22例が成功裡に手術がされていた. 全身転移は10例にみられ, 全例とも男性で, 平均年齢52.6±7.8歳, 平均透析期間98.3±37.8カ月, 腎癌の大きさ6.3±3.7 (1.2-14.0)cmで, 8例が多のう胞化萎縮腎を合併していた.
今回の48例を含め現在までに119例の透析患者の腎癌が見出され, うち25例 (21.0%) が転移していた. またこれら透析患者の腎癌は都道府県によって報告される数に大きな差がみられた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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