抄録
北里大学で腎移植を受けた患者の移植後CMV感染症について検討した. 対象はアザチオプリン (AZ) とプレドニゾロン (PSL) 使用のI群9名, AZ, ミゾリビン (MZR) とPSL使用のII群8名およびサイクロスポリンA (CYA), MZRとPSL使用のIII群24名およびそれら患者のドナー20名である. 方法は補体結合法で血清CMV抗体価を, ELISA法でそのIgクラスを測定した. 尿中CMVの分離は培養ヒト胎児肺細胞を用いて行った. 末梢血T細胞表面マーカーの検索はFITC標識抗Leu3aまたは抗Leu2a抗体を用いたフローサイトメトリーで行った.
移植後6ヵ月間におけるCMV感染の頻度は41名中29名 (70.7%) であり, その大部分 (23名) は臨床症状を伴わない不顕性感染であった. 免疫抑制法の異なるI, II, III群間ではCMV感染の頻度に差を認めなかった. しかし, III群の患者に比べて, Leu3a+細胞比率とLeu3a/Leu2a比の有意低下を認め, CMV感染における低免疫状態の関与をうかがわせた. 拒絶反応の有無とCMV感染は全体として有意の相関を示さなかった. しかし, 個々の症例ではCMV感染に引き続いて, 腎機能低下を示したものが4症例あり, CMV糸球体症の有無などに関してさらに検討が必要である. 20名のドナーのうち2名 (10%) で移植前新たなCMV感染が認められた. これらのドナーより移植を受けたレシピエントではいずれも移植後CMV感染を起こしており, このうちの1名は術前にCMV抗体陰性であった. したがって, 新たなCMV感染を有するドナーよりCMV抗体陰性のレシピエントへの移植は, 経腎感染の可能性が否定出来ないので避けるべきである.