抄録
透析患者の社会復帰の状態を把握し問題点を明らかにする目的で, 1985-86年にかけて福岡県内の64透析施設, 53団体の企業等のアンケート調査, 産医大の透析導入症例の予後調査を実施した (回収率: 透析施設67%, 企業体等89%, 産医大100%).
1) 企業体等の全従業員17万名中身障者は0.6%, うち透析中のもの59名, 平均年齢46±8歳, 平均透析歴6±4年. 休業中のものは5名で透析導入直後のものばかりであった. 透析導入前後の職務内容では, 事務職はそのまま同一の仕事を継続しているのに対し, 現場作業では2/3が作業軽減, 一部は事務職へ変わっていた. これら障害者の就労規定について, 特別な方針の無いものや, 主治医と相談して決定しているものが大部分 (77%) であった.
2) 産医大症例125例では, 完全・部分社会復帰70.4%, 社会復帰できていないもの29.5%であった. 原疾患別に社会復帰状況をみると, 慢性糸球体腎炎で社会復帰できていないもの14%に対し, 糖尿病では89%が社会復帰できていなかった.
3) 福岡県の透析患者15-64歳: 1632名. うち完全復帰56%, 部分復帰14%, 社会復帰していないものでは医学的な原因14%, 意欲の欠如10%, 復帰可能だが職がないもの6%であった. 男女別では完全・部分社会復帰は男性の63.0%に対し, 女性では80.5%と, 男性では有意に社会復帰率が低い (p<0.01). さらに社会復帰できていない男子357名中の38%が「医学的には社会復帰可能だが意欲・自主性などに問題あり」と判定されているのが注目され, 今後に残された課題であると考えられる.