日本透析療法学会雑誌
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エリスロポエチンによる貧血の改善と透析効率
大段 剛奥山 寛小林 力秋沢 忠男北岡 建樹越川 昭三西山 謙一高橋 淳子林田 順関口 高加藤 正人田口 又也
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1989 年 22 巻 3 号 p. 315-319

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抄録

遺伝子工学によるヒトエリスロポエチン (rhEPO) は, 多くの臨床治験によって腎性貧血を確実に改善することが立証されつつある. しかしその一方で, ヘマトクリット (Ht) の上昇が透析効率の低下やダイアライザー残血の増加など, 透析技術上の問題点を起こすことが懸念されている. 本研究では貧血改善がこれら透析技術上の問題点に及ぼす影響を検討した.
対象は安定期透析患者35例で, エリスロポエチン投与前2か月間とHtが10%以上上昇した時期の2か月間について, 透析効率, 残血の程度, ヘパリン使用量を比較検討した.
透析による除去率はBUNでは有意の変化は認められなかったが, クレアチニン (Cr) と尿酸の除去率は有意に低下した. しかし, これらの透析前値には有意の変化は認められなかった. 透析前値が上昇すると除去量が増加するため, この程度の除去率の低下では透析前値に有意の変化をきたさないためと考えられる. 血清K濃度の透析前値にも有意の変化はみられなかったが, 透析前K濃度が6mEq/l以上に上昇した例が35例中7例にみられ, うち5例ではカリメートの投与を必要とした. ダイアライザー内残血についても有意の増加は認められなかったが, 残血指数1度以上の増加を示した例が8例 (23%) あり, うち6例ではヘパリンの増量を要した.
以上の成績より, エリスロポエチン投与による貧血の改善が, 透析効率の低下と残血の増加をきたす傾向のあることは否定できない. いずれも既存の透析技術で対応可能の範囲の変化であるが, 症例によっては高度になる可能性があり, 血清K濃度やヘパリン使用量に十分注意する必要がある.

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