抄録
慢性血液透析患者で慢性感染症, 肝障害のない患者137例, 男性83例, 女性54例で超音波断層法により脾容積の計測を行ない, 年齢透析期間, 原疾患別, 血色素濃度, 白血球数, 血小板数との関係について検討した. 年齢は48.9±11.0歳, 透析期間は57.9±41.6月, 原疾患は慢性糸球体腎炎98例, 糖尿病21例, 多発性嚢胞腎10例, その他8例であった.
Spleen index 1536±736, 血色素濃度7.9±1.9g/dl, 白血球数5620±1666/mm3, 血小板数17.4±5.6×104/mm3 (mean±SD) であり, 脾腫を137例中37例に認めた.
Spleen indexは透析期間と有意な正の相関を認め (r=0.212, p<0.01), 年齢, 白血球数および血小板数とは有意な負の相関を認めた (r=-0.322, r=-0.269, r=-0.391, p<0.01) が, 血色素濃度とは有意な相関関係を認めなかった. 原疾患別のspleen indexの平均値は年齢と透析期間を合わせて選択した場合には有意差を認めなかった.
以上により, 血液透析の過程自体に脾容積の増大の原因があることが示唆され, 傷害された赤血球の捕捉が進行し, 白血球数や血小板数の減少も脾機能亢進により悪化すると推測された.