日本透析療法学会雑誌
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透析患者における腎癌発生の検討
1988年度アンケート調査報告
石川 勲
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1989 年 22 巻 6 号 p. 639-643

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抄録
透析患者の腎癌の現況を調べるために, 全国の透析施設, 泌尿器科教室などにアンケート調査を行った. アンケートは1,808通のうち1,262通が回収され, 回収率は70%であった. この結果, 115例の腎癌が見いだされた. 調査期間は前回に続く1986年3月より1988年2月までの2年間である. 115例の性別をみると男性91例, 女性24例で男性が79.1%を占め, 今回でも明らかに男性の透析患者に腎癌が多くみられた. 年齢分布は30歳より84歳, 平均51.4±11.5歳 (平均±標準偏差) であり, 特に30歳代, 40歳代にかなりの症例がみられた.
透析期間を見ると, 3か月-215か月平均94.6±54.5か月と長期例に多くみられた. 腎癌の大きさは平均4.6±3.4cmであった. 男女別に腎癌発生の年齢, 透析期間, 腎癌の大きさを調べてみたがいずれにも有意差はみられなかった.
腎癌症例のうち多のう胞化萎縮腎を合併したものは115例中92例80%にみられ, その平均年齢は合併しないものに比し, 若年老であった. またそれらを50歳以下とそれ以上に分けると, 50歳以下の症例では明らかに長期透析によって腎癌を発生していた.
診断の手がかりとしては肉眼的血尿などの症状によるものは20例 (17.4%) にすぎず, ヘマトクリットの急激な上昇をきっかけに腎癌が3例見いだされた点は注目すべきである. その他CTスキャンによるもの38例, 超音波検査47例であった. 転移は106例中17例16%に見られた. また転帰を見ると成功裡に腎摘がなされているもの77例, 腫瘍摘出が行われていないもの17例, 腎癌死8例, 他疾患死13例であった. なお, 今回のアンケート調査では, 過去3回に比べ最も多くの症例が報告されたこと, 特に1施設で多数例が報告されたこと, 超音波スクリーニングによる発見例が多くみられたことなどが特徴であった.
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© 社団法人 日本透析医学会
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