抄録
慢性腎不全となり透析療法を8年7か月間の長期にわたり行った全身性アミロイドーシスの一剖検例を経験したので報告する.
患者は透析導入時60歳の女性で, 導入6か月後にsick sinus syndromeにてpacemakerを装着したが, 頻回のpacing failureを来した. その6か月後に胆嚢摘除術を受けたが, その際, 肝生検組織にアミロイド沈着が証明され, 慢性胆嚢炎に続発した続発性アミロイドーシスと診断された. 心不全やシャントトラブルなどがしばしば起こり計12回の入退院を繰り返した. また, 透析中や透析後の低血圧が著明で, 時に透析が困難であったが, 低血圧の原因として心拍出量の低下の他, 末梢血管抵抗の低下も考えられた. 難治性の皮膚〓痒症が続いたが, 皮膚生検を3回行ってうち1回皮膚アミロイド沈着を証明できた. 患者は69歳で死亡したが, 剖検によりpacemakerが右心室穿孔を起こしているのが認められた.