日本透析療法学会雑誌
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慢性血液透析患者末梢血リンパ球, 単球のβ2-microglobulin産生能について
山根 伸吾若杉 和倫五十嵐 かおる延藤 卓生東 仲宣松金 隆夫鈴木 満
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1990 年 23 巻 1 号 p. 99-104

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抄録

慢性血液透析患者の末梢血単核球 (リンパ球, 単球) のβ2-microglobulin (β2-MG) 産生能について検討した.
Spontaneousなβ2-MG産生は末梢血単核球, リンパ球, 単球ともに慢性血液透析 (HD) 患者と対照の健康成人では, 培養96時間まで量的な差はなかった. Phytohemagglutinin-P (PHA-P) 10μg/ml刺激ではHD患者は健康成人に比較して末梢血単核球β2-MG産生が96時間培養で有意に低下した (p<0.005).
Recombinant interferon (IFN)-γ 100JRU/ml添加96時間培養で, 血清β2-MG 60mg/l濃度以上のHD患者末梢単核球のβ2-MG産生量は有意に低下した (p<0.05). そこで単核球をリンパ球と単球分離し, 無血清培地にてIFN-γ 100JRU/mlによるβ2-MG産生能を検討すると, リンパ球, 単球ともにβ2-MG産生能が低下しいた. しかし, 総体としての単核球のIFN-γ添加における3H-TdR摂取率は無添加と比較し, 差はなかった.
以上のようにβ2-MG産生に種々差異が生じてもDNA合成率には差異がないというようにHD患者では細胞応答系に何等かの異常が生じていることが示唆された.
またβ2-MG自体はfree β2-MG, HLA結合型β2-MG, modified β2-MGが混在しているため, 血清中および培養上清中のこれらの性状比率を明確にすることは今後の課題と考えられた.

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