抄録
わが国における一般人口の高齢化と食生活の欧米化傾向の進展に伴い, 動脈硬化症に関連する疾患が増加しつつある. その中で, 下肢血行障害の臨床的表現である間歇性跛行は, 患者のquality of lifeを損なう可能性のある重大な症状である.
一方, 最近, 家族性高脂血症に伴う冠状動脈の狭窄性病変が, LDLの選択的吸着療法 (Liposorbaシステム, 鐘渕化学工業KK) を続けるうちに退縮することが血管造影所見で確認されている. そこでこの吸着療法を, 高脂血症を伴う間歇跛行患者に臨床応用してみた.
患者は, 50歳から83歳, 男性7人, 女性2人であった. 基本的な適応基準を, 1. 間歇性跛行を主症状とする下肢血行障害があること, 2. 高脂血症があること (総コレステロール≧220mg/dl, LDLコレステロール≧140mg/dl), 3. 従来の内科的, 外科的療法に不応であるか, 何らかの理由で継続不能であることとした. 抗高脂血症剤を投与しながら, 導入期には頻繁に, 維持期には1-2週間毎に, 4-18か月の吸着療法を行った.
その結果, 全例において跛行に至るまでの距離の明らかな延長などの末梢血行の改善を示唆する効果が得られた. また, 7人でサーモグラフィー上, 2-4℃の局所温度上昇が認められた. 5人で指尖容積脈波上, 脈高の増大などの所見が得られた.
結論として, 高脂血症を伴う下肢血行障害に対してLDL吸着療法は, 有力な治療手段になる可能性があると考えられた.