抄録
維持透析患者における代謝性アシドーシスのカルシウム (Ca), リン (P) 代謝に及ぼす影響を検討するために, 対象として現在まで特に食事療法は受けておらず, さらに最低1年間はP吸着剤, ビタミンD3製剤やアルミニウム (Al) 含有の制酸剤などを服用したことのない非糖尿病性慢性透析患者23人において, 同状態にて最低3か月間経過観察し, 透析前の重炭酸イオン (HCO3-), Ca, P, アルカリフォスファターゼ (ALP), C-PTH, BUN, マグネシウムを定期的に測定し, HCO3-とCa, P, ALP, C-PTHとの関連性の有無について検討した.
HCO3-とPとの間には, 有意な逆相関関係が認められた. y=-0.59x+16.46, r=-0.674, p<0.01. またHCO3-とCa・P積の間にも, 有意の逆相関関係が認められた. y=-4.72x+134.65, r=-0.613, p<0.01. しかしHCO3-とCa, ALP, C-PTHとの間には, 有意の関係は認められなかった.
よって, 維持透析患者において, 代謝性アシドーシスは間接的に高P血症を介して, 腎性骨異栄養症の成因に関与している可能性が示唆された. また代謝性アシドーシスの是正は, 高P血症に対して投与されるAl製剤の投与量の減量に対しても有用であると思われた.