日本透析療法学会雑誌
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慢性腎不全に狭心症を合併し, CAPD経過中に著明なhydrothoraxをきたした1例
小野 孝彦山本 啓二金津 和郎関田 憲一尾上 千佳大谷 秀夫周防 正行永井 博之田村 忠雄
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1990 年 23 巻 9 号 p. 1007-1012

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抄録

糖尿病性腎症による慢性腎不全に狭心症を合併し, CAPDの経過中に著明なhydrothoraxをきたした1症例を経験したので報告する. 症例は呼吸困難を主訴とした62歳の男性. 母親と兄が糖尿病であり, 本人も昭和42年から糖尿病を指摘されている. 58年に尿蛋白を指摘され, 61年4月から不安定狭心症にて第1回目の入院. ISDN, ジルチアゼム, カプトプリル等を投与するとともに, BUN 92mg/dl, クレアチニン9.0mg/dlのためCAPDを開始. 心臓カテーテル検査では冠動脈に高度の狭窄が認められた. 退院後は狭心症発作も比較的に安定し, CAPDも順調であったが, CAPD導入より8か月後の62年1月より呼吸困難が出現し, 2回目の入院となった. 胸部X線では右胸部に著明な胸水貯留を認め, 胸水のグルコース465mg/dlであった. 99mTc-Snコロイドの腹腔内投与後, 速やかに右胸部にuptakeが見られた. その後, CAPDから血液透析に移行することによりhydrothoraxの消失をみたが, それまで緩解状態にあった狭心症発作がしばしば透析日に一致して生じるようになった. 本例では腹腔-胸腔間のdirect communicationの存在が示唆された. また合併の狭心症に対しては, 血液透析よりCAPDの方が良好であり, 安定した心血管系状態が得られるものと思われた.

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