日本透析療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-6211
Print ISSN : 0911-5889
ISSN-L : 0911-5889
上皮小体全摘一部自家移植術の評価
31症例の遠隔成績に基づく検討
塩崎 滋弘宮崎 雅史内田 晋河村 武徳三好 和也田中 信一郎阪上 賢一折田 薫三国米 欣明
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 23 巻 9 号 p. 1013-1019

詳細
抄録

保存的療法に抵抗を示すROD症例に対して上皮小体摘除術が広く行われている. その術式の中でも上皮小体全摘一部自家移植術 (PTX-AT) は極めて合理的な手術法であり, 我々もROD症例に対し本法を施行してきた. 今回はPTX-AT後の骨病変の経過を中心にその遠隔成績および問題点について検討した. 1984年より1988年にPTX-ATを受けた透析患者31例を対象とした. その男女比は20:11, 手術時の平均年齢は45.6±8.7歳, 平均透析年数は10.0±2.4年であった. PTX-AT後, 血清Ca値は活性型ビタミンDやCa製剤にてほぼ一定に維持された. 一方, 血清P値は術後低下したのち, 約1年後には術前のレベルにまで上昇した. PTH値は全例で術直後より激減したが, その後7例に再上昇 (PTH>5ng/ml) が認められ, うち1例は移植上皮小体による上皮小体機能亢進症の再発にて移植腺摘出を行い, 4例で残存腺の腫大を認めた. 全身骨レ線像をPTX-AT前後で比較してみると, 頭蓋骨 (salt & pepper像) や手指骨 (tuft resorption) では著明な改善を示し, 骨所見が陽性から陰性に転じた症例はそれぞれ67%, 74%に認められた. 腰椎 (rugger jersey spine) でも改善傾向を示したが, 陰性転化例は43%に留まった. Metacarpal indexは47.1%から51.1%に有意に増加し, PTX-AT後の骨量の増加を示唆した. その一方で末梢血管への石灰沈着が著明に認められた症例ではその改善はほとんど認められず, 中には悪化する症例も認められた. PTXはRODに対して有効であるが, 血管系の著明な石灰化病変には効果が期待できず, 今後検討を要する問題と考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top