日本透析療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-6211
Print ISSN : 0911-5889
ISSN-L : 0911-5889
慢性腎不全患者の胃粘膜病変とその原因に関する検討
徳田 雄一橋口 尚文浜田 富志夫山下 亙田中 啓三馬場 泰忠中島 晢原田 隆二渋江 正有馬 暉勝
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 23 巻 9 号 p. 1021-1025

詳細
抄録

慢性腎不全患者の胃粘膜病変の原因解明のため血液透析患者 (137名) に内視鏡検査を行い胃粘膜病変の頻度および発生部位について検討し, さらに胃粘膜防御機構に関して血中HCO3-濃度測定 (66名), レーザードップラー法による胃粘膜血流量の測定 (46名) を行った. また胃疾患との関連性が指摘されているCampylobacter pyloriを胃粘膜より培養法にて検出 (23名) した. 血液透析患者の胃粘膜病変には, びらん性胃炎, 胃潰瘍, 急性胃炎などが多くみられ, その発生部位は胃前庭部に多かったが急性胃炎については胃体部にも66.7%に病変が認められた. 血液透析患者の血中HCO3-濃度は19.5±2.6mEq/lとコントロール群に比較して低値を示した. 血液透析患者ではコントロール群との比較で胃体上部大彎にて胃粘膜血流量の低下がみられた. Campylobacter pyloriの検出率は43.5%でコントロール群と有意差は認めなかった. 以上より慢性腎不全患者における胃粘膜病変の原因として血中HCO3-濃度低下による胃粘膜HCO3-分泌の低下, 胃体部の胃粘膜血流量の低下などの胃粘膜防御機構の障害が関与していると考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top