日本透析療法学会雑誌
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急性腎不全78例の臨床的検討
田浦 幸一金本 康秀田所 正人今村 厚志大園 恵幸原田 孝司原 耕平
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1990 年 23 巻 9 号 p. 967-973

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抄録
1974年2月より1988年12月までの15年間に, 当院へ入院した血液透析を必要とした急性腎不全患者は96例 (平均年齢61.1歳, 男性66例, 女性30例) で, 慢性腎不全も含めた全透析例599例中の16.0%に相当した. 本稿では, 症例を腎性の急性腎不全78例に限定して検討した, 原因別の内訳は, 脱水22例, ショック15例, 抗生剤11例, 肝腎症候群7例, 薬物中毒6例, 悪姓腫瘍に伴う高Ca血症3例, 術後腎不全3例, 造影剤2例, DIC2例, ワイル病2例, ラブドミオライシス2例, その他腎梗塞, 骨髄腫, 急速進行性糸球体腎炎各1例であった.
透析よりの離脱が可能であった症例 (renal recovery) は, 脱水72.7% (22例中16例), ショック33.3% (15例中5例), 抗生剤72.7% (11例中8例) などで, 全体では55.1% (78例中43例) であった. また救命できた症側 (survival) はそれぞれ63.6%, 26.7%, 36.4%, 43.6%であった. これら症例の大半は心, 肺, 肝, 消化管, 中枢神経系, 凝固, 感染などの多臓器障害を有していたが, 障害臓器数の多い群ほど, 離脱率や救命率は減少していた. たとえば障害臓器数0の群では, 離脱率と救命率は78.6%であったが障害臓器数4ないし6の群ではそれぞれ33.3%と11.1%であった.
これらの成績より, 合併症や多臓器不全が急性腎不全の予後を決定する重要な因子であると考えられた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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