抄録
症例は46歳女性. 平成元年1月より下肢に浮腫あり. 同年7月頃より両手に力が入りにくくなり両下肢遠位部のしびれも出現, 8月に入り歩行困難, 浮腫増悪, 腎機能低下がみられ精査加療目的で入院となる. 皮膚血管腫, 剛毛, 甲状腺機能低下, 浮腫, 腹水, 心嚢水貯留, 末梢神経炎, 髄液の蛋白細胞解離, 脾腫, IgA-λtypeのM蛋白の存在を認め, Crow-Fukase症候群と診断した. 入院第25病日よりanasarca増悪し, 腎機能低下, 乏尿を認め, 第35病日BUN 135mg/dl, Cr 4.5mg/dl, K6.6mEq/lで血液透析 (HD) 導入となった. HD導入と同時にステロイド療法を開始. HD導入後3日目より2,000-3,500ml/dayの利尿を得, 血液透析計9回施行し離脱となった. ステロイド剤はパルス療法計3回を含めて行い, 浮腫, 腹水, 心嚢水は消失し, 腎機能も正常化した. 神経学的所見は, 著明に改善し, 血管腫も縮小を認めた. 腎機能正常化後の腎生検では, 糸球体係蹄壁の肥厚, 内皮下腔の拡大所見を認めた. 本症例の腎機能低下は, 係蹄壁肥厚によるGFRの低下および異化亢進によると考えた. 本症は著明な浮腫を伴う疾患で, 腎障害の合併が近年注目されているが, 本例のごとく著明な腎機能障害を呈する例は珍しく, かつ透析療法およびステロイド療法によって著効を示した貴重な症例と考えたので報告した.