日本透析療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-6211
Print ISSN : 0911-5889
ISSN-L : 0911-5889
血液透析患者にみられた後腹膜腔血腫の1例
谷 善啓大園 誠一郎丘田 英人田畑 尚一岩井 哲郎吉江 貫三馬 省二金子 佳照平尾 佳彦岡島 英五郎
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 24 巻 4 号 p. 581-584

詳細
抄録
血液透析患者に発生した腎動脈瘤破裂が原因と考えられる後腹膜腔血腫の1例を経験したので, 若干の考察を加えて報告する.
症例は45歳男性. 1988年12月3日より, 悪性高血圧による慢性腎不全のため血液透析に導入された. 1989年3月8日, 突然左側腹部痛のため入院した. 精査の結果, 左腎動脈瘤破裂による後腹膜腔血腫と診断し, 腎動脈分枝の動脈瘤より起始部にコイルにて塞栓術を施行した. しかし, 貧血の進行が持続したため保存的治療を断念し, 腎摘出術を施行した. 摘出標本にて, 動脈瘤の破裂部が確認でき, 病理組織学的に血管壁の肥厚変性, 弾性線維の消失が認められた. 術後経過は良好にて術後23日目に退院し, 維持透析を続けている.
血液透析患者にみられた腎よりの後腹膜腔血腫の本邦報告例は我々の調べ得た限り自験例を含め10例であり, うち腎動脈瘤破裂に起因する症例は2例であった.
著者関連情報
© 社団法人 日本透析医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top