日本透析療法学会雑誌
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再生不良性貧血に対してリコンビナントヒトエリスロポエチンの大量投与が奏効したと思われる慢性腎不全の1例
中村 紀子久保 和雄小松 義昌加藤 満利子松村 治中村 修須藤 祐司
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1992 年 25 巻 11 号 p. 1271-1277

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抄録
慢性腎不全の経過中に再生不良性貧血を合併し, リコンビナントヒトエリスロポエチン (rHuEPO) の大量投与が奏効した症例を経験したので報告する. 症例は57歳女性. 慢性腎不全, 糖尿病にて外来経過観察中であったが, 貧血の進行, 繰り返す鼻出血のため精査入院となった. 入院時検査では, 白血球2,800, ヘマトクリット20.8%, 血小板2.2万と著明な汎血球減少症を呈し, また, 尿素窒素77.1mg/dl, クレアチニン6.7mg/dl, 24 hrCcr 6.1ml/minと高度腎機能障害を認めた. 血漿鉄消失率, 骨髄シンチグラム, 骨髄生検像, 他の汎血球減少症を示す症患の除外診断より, 患者は再生不良性貧血 (中等症) と診断され, 消炎鎮痛剤の服用歴から, 薬剤性の可能性が高いと考えられた.
治療として, 血液透析導入2回目よりrHuEPO 6,000U/回, 週3回静脈内投与を開始した. 網状赤血球は数日後-過性に上昇したが10日後再び低下し, 汎血球減少症の改善も見られないため, 2週間後12,000U/回, 週3回投与へ増量した. その後, 2-3週目より網状赤血球, 白血球, 赤血球, 血小板の有意な増加が認められ, rHuEPO投与15か月後の現在は, 1,500U/回, 週2回投与にて血液学的成績は安定し, また, 骨髄シンチグラム, 骨髄生検像にても有意な改善が認められている. 本症例はrHuEPO大量投与により赤血球のみならず, 白血球, 血小板ともに増加が認められた興味ある1例であり, 若干の考察を加え報告する.
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