抄録
慢性腎不全の経過中に再生不良性貧血を合併し, リコンビナントヒトエリスロポエチン (rHuEPO) の大量投与が奏効した症例を経験したので報告する. 症例は57歳女性. 慢性腎不全, 糖尿病にて外来経過観察中であったが, 貧血の進行, 繰り返す鼻出血のため精査入院となった. 入院時検査では, 白血球2,800, ヘマトクリット20.8%, 血小板2.2万と著明な汎血球減少症を呈し, また, 尿素窒素77.1mg/dl, クレアチニン6.7mg/dl, 24 hrCcr 6.1ml/minと高度腎機能障害を認めた. 血漿鉄消失率, 骨髄シンチグラム, 骨髄生検像, 他の汎血球減少症を示す症患の除外診断より, 患者は再生不良性貧血 (中等症) と診断され, 消炎鎮痛剤の服用歴から, 薬剤性の可能性が高いと考えられた.
治療として, 血液透析導入2回目よりrHuEPO 6,000U/回, 週3回静脈内投与を開始した. 網状赤血球は数日後-過性に上昇したが10日後再び低下し, 汎血球減少症の改善も見られないため, 2週間後12,000U/回, 週3回投与へ増量した. その後, 2-3週目より網状赤血球, 白血球, 赤血球, 血小板の有意な増加が認められ, rHuEPO投与15か月後の現在は, 1,500U/回, 週2回投与にて血液学的成績は安定し, また, 骨髄シンチグラム, 骨髄生検像にても有意な改善が認められている. 本症例はrHuEPO大量投与により赤血球のみならず, 白血球, 血小板ともに増加が認められた興味ある1例であり, 若干の考察を加え報告する.