日本透析療法学会雑誌
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高齢者におけるCAPDの臨床的検討: 我々の経験より
高野 真彦楠本 泰博
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1992 年 25 巻 11 号 p. 1279-1283

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抄録
当院では1981年6月より人工透析室を開設し, 現在に至っている. その間, 1983年8月より5名の高齢者にCAPDを行ってきた. 内訳は男性4名, 女性1名で, 平均年齢は77.4歳 (72歳より89歳まで), 維持期間は平均17.4か月 (2.5か月より55か月まで) であった. 原疾患は慢性糸球体腎炎2例, 尿路結石術後慢性腎盂腎炎1例, 慢性リウマチ性関節1例, 心不全1例であった. このうち最初から積極的にCAPDによる維持管理に対応した症例は3例で, ほかの2例は透析困難症であった. 腹膜炎の発生頻度は少なく, 当初懸念していたほどではなかったが, 度重なるごとに難治性となる傾向にあった. 最も特徴的な合併症は脱水とそれに伴う極端な低血圧の持続であり, そのため徐々に体動が困難となり, ついには全例痴呆状態に陥ってしまった. ここでは主に, 自己または家族の協力による家庭での維持管理が可能となり得た3症例について, 経過を追いつつ検討を行い, さらに老人医学的観点より水分・電解質バランスにつき, 文献を交えて考察を加え, 高齢者におけるCAPDの問題点について触れてみた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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