日本透析療法学会雑誌
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血液透析を要した多発性骨髄腫における透析離脱症例の解析
横田 直人加藤 ふみ川村 光伸家村 文夫内田 俊浩斉田 光彦黒木 長充久永 修一盛田 修一郎麻生 和義藤元 昭一山下 政紀山本 良高江藤 胤尚
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1992 年 25 巻 9 号 p. 995-1000

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抄録
血液透析療法 (HD) を必要とした多発性骨髄腫 (multiple myeloma: MM) 9例について, その臨床経過と検査所見を透析離脱例と非離脱例に分けて解析し, 腎機能回復に及ぼす因子について検討した. 9例中5例は化学療法などの積極的治療により腎機能が回復し, HDを離脱した (離脱群), 残りの4例はHDの継続を必要とした (非離脱群). HD導入時の離脱群の平均年齢は非離脱群に比し低い傾向にあったが, MMそのもののstageには差がなかった. また全例でBence Jones蛋白 (BJP) が陽性であったが, その尿中排泄量と腎不全の程度の間に相関はなく, 腎機能回復にも関係なかった. 離脱群のMMの型は1例を除き全例light chain (LC) 型であったのに対し, 非離脱群ではLC型を認めなかった. 腎不全の誘因としてはBJP, 脱水, 高カルシウム血症, 高尿酸血症が両群に共通して認められたが, HD導入時の検査所見は両群間にいずれも差を認めなかった. MM関連症状出現よりHD導入までの期間は, 離脱群は1例を除いて全例1か月以内で, 非離脱群より明らかに短かった. また, 離脱群は1例以外は急性腎不全による発症で, その原因にLCが考えられた. 一方, 非離脱群は慢性腎不全からの増悪例が多く, アミロイドーシスによる心不全が, 腎機能の回復を妨げた-因であった. 以上より, MM関連症状出現よりHD導入までの期間, 腎不全の発症形式, アミロイドーシスの合併などの所見は腎機能の回復に重大な影響を及ぼす因子と考えられた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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