日本透析療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-6211
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25 巻, 9 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 多川 斉
    1992 年25 巻9 号 p. 969-976
    発行日: 1992/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
  • 富樫 和美, 秋葉 隆, 藤田 祥司, 川上 正也, 丸茂 文昭
    1992 年25 巻9 号 p. 977-981
    発行日: 1992/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析患者の血中BNP動態を検討し, 血液透析患者の平均血中BNP値が, 健常人のそれに比較し約10倍上昇していることを確認した. また, 健常人および血液透析患者の血中BNPの存在様式に, 大きな差異が認められ, 健常人の血中BNPが低分子型のBNP (1-32) であるのに対し, 血液透析唐者のそれは大部分が高分子型のγ-BNPであった. さらに, 血液透析前の血中BNP値は心胸郭比と有意な相関を示したが, 血液透析前後における血中BNP減少率と体液量の減少率との間には有意な相関は認められなかった.
  • Lp(a) リポタンパクも含めて
    大橋 宏重, 小田 寛, 松野 由紀彦, 松尾 仁司, 琴尾 泰典, 杉山 明, 松原 徹夫, 西田 佳雄, 森 省一郎, 加納 素夫, 渡 ...
    1992 年25 巻9 号 p. 983-988
    発行日: 1992/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性血液透析 (HD) 患者の脂質代謝異常が動脈硬化症の進展に関与していることが報告されているが, 持続性自己管理腹膜透析 (CAPD) 患老ではHD患者の脂質代謝異常の特徴である高中性脂肪 (TG) 血症, 低HDL-コレステロール (HDL-C) 血症に透析膜によるブドウ糖の負荷と透析膜としての腹膜の特性が加味された病態が予想される.
    本研究ではIgA腎症, HD患者を対照にCAPD患者の脂質代謝異常について検討した. また高脂血症, 血栓症, 動脈硬化症との関係から注目されているLp(a) についても検討し, 以下の結論が得られた.
    CAPD患者では, IgA腎症, HD患者に比較して総コレステロール (TC), TG, LDL-コレステロール (LDL-C), 動脈硬化指数, アポリポタンパクB (Apo B), Apo B/A-Iが高く, HDL-CはHD患者と同様に低値を示した. またCAPD患者のLp(a) は高値を示し, 血清アルブミンと逆相関を認めたことから, 肝での合成亢進による可能性が考慮されるが, その機序の詳細は不明である. なおペルサンチン負荷心筋タリウムシンチグラムで心筋虚血が認められたCAPD患者のLp(a) は認められなかった患者に比較して高値を示さなかった.
    以上よりCAPD患者はIgA腎症, HD患者に比較して脂質代謝の面より動脈硬化促進的であることが示唆された.
  • 生間 昇一郎, 堀川 直樹, 河田 陽一, 永吉 純一, 守屋 昭, 佐々木 憲二, 本宮 善恢
    1992 年25 巻9 号 p. 989-993
    発行日: 1992/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    維持透析患者におけるアルミニウム貧血症は, 発症機序の一つとして鉄代謝障害が考えられている. 今回我々は維持透析患者25人を対象として, アルミニウム蓄積の鉄代謝への影響を検討するために, RBC-AI濃度と鉄代謝パラメータの比較を行った.
    鉄代謝パラメータとして, 血清Fe, トランスフェリン (Tf), TIBC, UIBC, 血清フェリチン (Ft) 値を測定した.
    RBC-AI濃度は, 健常者31.9±9.9μg/1013 cellsに対し, 維持透析患者66.5±33.6μg/1013 cellsと透析患者群で有意に高値を示した. RBC-AI濃度とHbとの間には相関は認めなかった. Fe/TfとはR=-0.515, Fe/TIBCとはR=-0.505の負の相関を認めた.
    以上より, 臨床的にもアルミニウムの蓄積が鉄代謝障害を介して, 貧血症の発生に関与している可能性が示唆された.
  • 横田 直人, 加藤 ふみ, 川村 光伸, 家村 文夫, 内田 俊浩, 斉田 光彦, 黒木 長充, 久永 修一, 盛田 修一郎, 麻生 和義, ...
    1992 年25 巻9 号 p. 995-1000
    発行日: 1992/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析療法 (HD) を必要とした多発性骨髄腫 (multiple myeloma: MM) 9例について, その臨床経過と検査所見を透析離脱例と非離脱例に分けて解析し, 腎機能回復に及ぼす因子について検討した. 9例中5例は化学療法などの積極的治療により腎機能が回復し, HDを離脱した (離脱群), 残りの4例はHDの継続を必要とした (非離脱群). HD導入時の離脱群の平均年齢は非離脱群に比し低い傾向にあったが, MMそのもののstageには差がなかった. また全例でBence Jones蛋白 (BJP) が陽性であったが, その尿中排泄量と腎不全の程度の間に相関はなく, 腎機能回復にも関係なかった. 離脱群のMMの型は1例を除き全例light chain (LC) 型であったのに対し, 非離脱群ではLC型を認めなかった. 腎不全の誘因としてはBJP, 脱水, 高カルシウム血症, 高尿酸血症が両群に共通して認められたが, HD導入時の検査所見は両群間にいずれも差を認めなかった. MM関連症状出現よりHD導入までの期間は, 離脱群は1例を除いて全例1か月以内で, 非離脱群より明らかに短かった. また, 離脱群は1例以外は急性腎不全による発症で, その原因にLCが考えられた. 一方, 非離脱群は慢性腎不全からの増悪例が多く, アミロイドーシスによる心不全が, 腎機能の回復を妨げた-因であった. 以上より, MM関連症状出現よりHD導入までの期間, 腎不全の発症形式, アミロイドーシスの合併などの所見は腎機能の回復に重大な影響を及ぼす因子と考えられた.
  • 静脈内および腹腔内投与法の比較
    那須 誉人, 三井 博, 篠原 陽一, 林田 重昭, 大塚 博之
    1992 年25 巻9 号 p. 1001-1009
    発行日: 1992/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析患者に対するリコンビナントヒトエリスロポエチン (r-HuEPO) の効果および至適投与量, 投与方法に関しては数多くの報告が見られるが, CAPDに関してはその報告は少ない. 我々はCAPD患者に対してr-HuEPOを静脈内および腹腔内に投与し, その貧血改善効果, 投与量, 副作用につき比較検討した.
    はじめに基礎的検討として1. CAPDバッグ内のr-HuEPO濃度の経時的変化, 2. r-HuEPO腹腔内投与時の体内動態の検討を行った. その結果CAPDバッグ内でr-HuEPOは比較的安定していた. またr-HuEPO 12,000 Uを単回腹腔内に投与したとき12時間後に血中濃度は最高 (50-60mU/ml) となった.
    次にCAPD患者19名を対象として9名に対してr-HuEPOを6,000 Uより週1回静脈内投与した. 6週間毎に効果判定を行い, 増量基準にしたがって最高18,000 Uまで増量し18週間後に最終判定を行った. CAPD患者10名に対してはr-HuEPOを12,000 U, 週3回腹腔内投与した. 6週間毎に効果判定を行い, 増量基準にしたがって最高24,000 Uまで増量し18週後に最終判定を行った.
    その結果, 静脈内投与群においては評価可能症例7例中, ΔHt 5%以上の著効例は6例 (85.7%) であった. また腹腔内投与群では著効例は9例 (90%), 有効例 (5%> ΔHt≧3%) は1例 (10%) であった.
    CAPD患者に対してr-HuEPOは静脈内および腹腔内投与で良好な貧血改善効果が得られた. 腹腔内投与法は静脈内投与に比べ多量のr-HuEPOを必要とするが, 患者に与える苦痛も少なく将来考えてゆきたい方法である.
  • 江本 俊秀, 宮崎 洋一
    1992 年25 巻9 号 p. 1011-1017
    発行日: 1992/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    当院では, 透析患者にできるだけ負担のかからない透析をするために, 特に血流量と小分子除去率に着目してノモグラムを作成し, 透析量を決定してきた. その結果BUNの除去率が60-65%のとき, 臨床症状の発現頻度が最も少なく, この除去率をもとにしてurea kineticsによる, kt/v, pcr, TACを求めて検討した.
    対象は透析患者125名中, DM, SLE等を除く91名である. Urea kineticsの重要なパラメータ (kt/v, pcr, TAC) について統計的解析を行い, また新たなノモグラムを作成するために, 単位体重当りの膜面積 (X) と血流量 (Y) およびkt/v (Z) による重回帰分析を行った.
    kt/vはpcrと正の相関を示し (r=0.498), pcrはTACと正の相関 (r=0.737) を示した. しかしkt/vとTACの間には相関が認められなかった (r=0.110).
    重回帰分析の結果は, Z=-20X+0.428Y+0.11で重相関計数は0.76であった.
    以上のことより透析量の増大は蛋白異化を亢進し, 平均尿索濃度を上昇させる. 従って透析効率を必要以上に上昇させることはかえって好ましくないことが示唆された. また重回帰分析の結果では, kt/vは血流量の影響が大であり, 膜面積にはあまり左右されなかった. 目標とされるkt/vは1.0-1.2であり, この透析量を得るには膜面積が0.02-0.025m2/kgで血流量を3.0-3.5ml/min/kgに設定することで十分である.
    至適透析には, 過不足のない透析量の設定が重要であることを再確認した.
  • 透析の影響
    今村 均, 青木 淳子, 嶋田 英剛, 末永 綾香, 小田切 優樹, 原田 久美子, 杉井 篤
    1992 年25 巻9 号 p. 1019-1023
    発行日: 1992/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    非ステロイド系抗炎症薬であるKetoprofenの立体選択的蛋白結合性を尿毒症血清について検討したところ, 血液透析の前後で立体選択的蛋白結合性に著しい変化が観察された. そこで, それらの変動要因を明らかにするため, 透析後に急激に増える血中脂肪酸およびヒト血清アルブミン (HSA) 中のメルカプトアルブミン (HMA) およびノンメルカプトアルブミン (HNA) に着目して, Ketoprofenの立体選択的蛋白結合性に及ぼすこれらの影響について検討した. その結果, 遊離KetoprofenのR体とS体の割合 [(FR/FS) ratio] と血清中の遊離脂肪酸濃度との間に良好な負の相関性が認められた. この結果は, 血清中の遊離脂肪酸が異常に増加したことにより, HSAのコンボメーション変化が惹起されたことによるものと考えられる. さらに, メルカプトアルブミン分率 [fHMA=HMA/(HMA+HNA)] と立体選択的蛋白結合性 [(FR/FS) ratio] との間にも良好な負の相関性が認められた. これは, HMAとHNAに対するKetoprofenの結合能の差異に起因するものと推察される.
    以上のように, Ketoprofenの立体選択的蛋白結合性の変動は, HSAへの遊離脂肪酸の結合あるいはメルカプトアルブミン分率の増大に伴うHSAのコンボメーション変化などに基づくことが示唆された. これらの知見は, 透析後において活性体S(+)-Ketoprofenの遊離濃度がR(-) 体のそれより著しく増加することを示しており, 慢性腎不全患者における薬物療法を考える上で有用な基礎資料になるものと思われる.
  • 本宮 善恢, 岡島 英五郎, 宇治 義則, 岡部 紘明
    1992 年25 巻9 号 p. 1025-1028
    発行日: 1992/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    49名の維持透析患者において血中I型collagen関連C断端-peptideを測定し, 腎性骨異栄養症における診断価値を検討した. その結果, 健常者390.7±130.4ng/mlに対し男性患者 (n=27) では644.9±244.5ng/ml, 女性患者 (n=22) では697.7±279.7ng/mlといずれも有意な高値がみられた. また36か月以内の短期透析群と60か月以上の長期透析群の比較では, 短期透析群で551.0±207,8ng/ml長期透析群で709.8±248.8ng/mlと, 有意に (p<0.05) 後者で高値がみられた.
    以上より, 骨collagenの主体であるI型collagen関連peptideの血中濃度測定は, 従来の腎性骨異栄養症の生化学的指標であるアルカリ性フォスファターゼやbone γ-carboxyglutamic acid containing proteinと同じく腎性骨異栄養症の診断における臨床的有用性は高いと考えられた.
  • 小山内 幸, 植松 和家, 本村 文一, 森田 秀, 舟生 富寿, 兼子 直
    1992 年25 巻9 号 p. 1029-1035
    発行日: 1992/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析治療をした350例を対象に, 生涯透析治療を続けていくうえで, どのような生きがいをもって日常生活を送っているかを, 透析期間, 性格傾向, 年代別との観点から検討した. 透析期間と生きがいの関連では, 全期間を通じて家族28%, 次いで社会復帰13%をあげたものが多く, 具体的な生きがいを持たない症例は41%と最も多かった. 性格検査には, Y-G性格検査を用いたが, 同時にCMI健康調査も施行した. Y-G性格検査によるE型およびCMI健康調査によるIV領域 (神経症傾向を有する例) を示す症例では, 他の群に比較し家族, 社会復帰をあげる者は少なく, 反面健康をあげる者, 生きがいなしとする者が多かった. 年代との関連では, 男女による差異が認められたため, 男女2群に分けて検討した. 学齢期では, 男女とも半数以上が生きがいなしと答え, 成人前期の20代男性において社会復帰をあげるものが多く, 女性では趣味が多くあげられた. 30代では, 男女とも家族を生きがいとしているものが多く (男45%, 女27%) 生きがいなしは, それぞれ33%であった. 成人後期では, 40代は30代とほぼ同様であった. 50代は男女とも家族 (男28%, 女13%) を生きがいにしていることに変りはないが, 生きがいをもたない症例も男性は50%, 女性42%と高率であった. 老年期になると, 家族を生きがいとする症例は多いが (男23%, 女24%) 年代が高くなるに従い, 生きがいをなくしている症例も増加し, 60代男性で52%, 70代では男女ともに70%以上と高率で, 80代の2例はいづれも生きがいをもっていなかった.
    これらの結果から, 生涯にわたる透析治療が必要な患者のquality of lifeを考えるとき, 有意義な生活を送るには, いかにケアプランを作成し援助していくかを, 検討する必要性があると考えられる.
  • 澤村 正之, 木村 文宏, 青柳 貞一郎, 高尾 雅也, 浅野 友彦, 小田島 邦男, 長倉 和彦, 村井 勝, 中村 宏
    1992 年25 巻9 号 p. 1037-1043
    発行日: 1992/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    腎同種移植後の内シャントの開存状態について臨床的検討を行った. 防衛医科大学校泌尿器科で腎同種移植を行った19名の患者を対象として, シャントが開存している患者を開存群, 閉塞した患者を閉塞群, 手術的に閉鎖した患者を手術群に分けた. シャントの開存率は3年で52.5%で, シャント造設時の年齢と性比をマッチングさせた慢性透析患者からなる対照群と比較して, 有意に低かった. シャントの閉塞に関係したと思われるエピソードとして, 頻回穿刺, 打撲, 下痢による脱水と圧迫, 血管炎が認められた. 閉塞群では, 他の2群と比較して移植時の年齢が高かったこと, 移植腎機能が良好であったこと, 移植前から血清総コレステロール値とトリグリセライド値が高いレベルにあったこと等が特徴的であった. なお, 末梢血ヘモグロビン値, ヘマトクリット値, 血小板数および血圧は, 開存群と閉塞群の間に有意差を認めなかった.
  • 1. アミロイド沈着局所に認められる滑膜炎の病理組織学的特徴
    宮崎 滋, 甲田 豊, 湯浅 保子, 酒井 信治, 鈴木 正司, 高橋 幸雄, 平沢 由平, 森田 俊, 山本 格, 松木 裕
    1992 年25 巻9 号 p. 1045-1050
    発行日: 1992/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    β2-ミクログロブリン (β2-MG) によるアミロイドーシスに認められる滑膜炎の実態について, 手根管滑膜を中心とした67症例106検体を対象として, 組織学的に検討し以下の結果を得た. 60%に軽度~中等度の滑膜炎を認め, 30%には巨細胞も伴っていた. 増生細胞の主体は, CD-68陽性細胞とCD-68陰性細胞であり, リンパ球, 多核白血球は少なかった. β2-MGアミロイドと近接して認められる細胞はCD-68陽性細胞 (マクロファージ) とCD-68陰性細胞であり, CD-68陽性細胞 (マクロファージ) による貧食像も認められた. 以上のことから, 滑膜炎には少なくともアミロイドに反応し処理しようとする側面があることが示唆される. さらに, β2-MGアミロイドによるとされている骨, 関節, 滑膜障害の治療対策を考える際に, アミロイドの沈着を抑制することに加え, 局所の炎症を制御することも重要であると思われる.
  • 根木 茂雄, 打田 和宏, 児玉 敏宏, 嶋 渡, 上田 俊郎, 戎 直志, 松尾 恒久, 坂口 俊文, 大橋 誠治, 阿部 富彌
    1992 年25 巻9 号 p. 1051-1055
    発行日: 1992/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    長期透析患者に発生する後天性腎嚢胞 (ACDK) は, 貧血の改善に影響をおよぼす可能性があり, また腎細胞癌の合併頻度が高いとされ, 最近問題となってきている.
    1988年より1990年までの3年間に腎CTを施行した慢性血液透析患者60名を対象に, ACDK症例の頻度, ACDK発生率の性差, 腎嚢胞の数とヘマトクリット (Ht) の関係, 透析歴と血清エリスロポエチン (EPO) 濃度の関係, Htと血清EPO濃度の関係などについて検討した.
    ACDKの発生率は透析歴が5年以上になると増加する傾向にあった. また, 性別においては, 男性では発生率が90.0%に対して女性は53.3%と有意な差が認められ, 多発性に嚢胞が発生する症例では男性の占める割合が高く, ACDKの発生には性ホルモンが関与する可能性が示唆された.
    ACDK症例において嚢胞が左右いずれかに11個以上認められる症例と, 10個以下の症例では, Htの平均に有意な差が認められた. Htと血清EPO濃度の間には有意な相関は認められなかった. 透析歴と血清EPO濃度の間には有意な相関は認められなかった.
    ACDK症例において, 多発性に嚢胞が形成されてくれば, 貧血の改善が認められる傾向にあるが, 嚢胞形成と血清EPO濃度の間には関連は見出せなかった.
  • 井上 聖士, 吾妻 真幸, 藤田 嘉一, 平林 俊明
    1992 年25 巻9 号 p. 1057-1061
    発行日: 1992/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    種々の異なった病態の慢性腎不全に対してCa free hemodialysis (HD) によるPTH分泌刺激試験を行い副甲状腺機能につき検討した. 臨床的に副甲状腺機能が正常の透析患者10例, secondary hyperparathyroidism (2°HPT) 3例, parathyroidectomy (PTX) 後状態6例 (うち2例は無副甲状腺) を対象とした. 試験方法はCa free HD 60分, 続いてCa 3.5mEq/lHD 4時間行い, 血清総Ca, イオン化Ca, intact-PTHを透析前, 透析後30, 60, 300分に採血し, 測定した. 血清総Caとイオン化CaはCa free HD 15分後すでに下降し, 60分目に最低となり, 300分には透析前値より上昇した. intact-PTHは, 正常副甲状腺機能の透析患者では30-60分で頂値に達し (平均Δintact-PTH 110pg/ml), 300分後には前値以下となった. 2°HPTの症例はCa free HDに過剰反応を示した (Δintact-PTH 400-1,000pg/ml). PTX後状態6例のうち4例は正常反応に, 無副甲状腺と考えられた2例では無反応であった.
    以上の結果から, Ca free HDによって慢性腎不全の種々の副甲状腺機能状態を評価することができ, 治療法の選択や予後の推測に活用できるものと考えた.
  • 佐藤 孝子, 松村 治, 湯村 和子, 二瓶 宏, 杉野 信博, 太田 和夫, 豊田 智里
    1992 年25 巻9 号 p. 1063-1067
    発行日: 1992/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析導入後8年で低血圧, 四肢血行障害をきたし, 感染症にて死亡し, 原発性蓚酸症と考えられた症例を報告する.
    症例は39歳の男性. 4歳で膀胱結石の既往あり. 31歳で維持透析開始. 34歳頃よりシャントトラブルを起こし, 徐々に四肢の腫脹, 疼痛が増強した, 平成2年5月シャント再建不能となり, CAPDに導入されたが, 腹膜炎を繰り返したため, 9月当院を紹介され転院した.
    入院時, 低血圧 (62/40mmHg), 四肢の腫脹, 関節の可動制限, 疼痛, 下肢の潰瘍を認めた. X線にて両腎石灰化, 両側手指骨の骨膜下吸収像と末節骨の嚢胞状変化, 血管および軟部組織の石灰化がみられた. 腹水液培養にて真菌が検出されたためCAPDを中止し, 血液濾過法を行った. 低血圧に対してはミドドリンを, 下肢の潰瘍に対してはPGE1および抗凝固剤を投与するも改善傾向はみられず, 次第に循環不全は増悪していった. さらに感染症を併発し, 全身状態は悪化し, 死亡するに至った.
    剖検にて, 腎, 心筋, 肺, 肝, 膵, 脾, 副腎, 甲状腺, 骨髄, 滑膜, 皮下組織などに蓚酸カルシウム結晶の著明な沈着が認められた. 幼児期の膀胱結石の手術既往があり, ビタミンC製剤の服用歴はないことから, 原発性蓚酸症と診断された. 動脈壁への沈着はあまりみられなかったが, 心筋には全体にわたり高度な沈着があり血圧低下の原因と考えられた.
    本症は稀な疾患であり, 慢性腎不全にて無尿となった患者における診断は難しい. 腹部X線にて腎石灰化があり, 二次性副甲状腺機能亢進症と類似の骨X線所見を呈する透析患者では, 本症も考慮する必要があり, 骨生検, 骨髄生検を行うことにより診断がつく可能性があると考えられた.
  • 桑原 守正, 松下 和弘, 中村 晃二, 吉永 英俊, 藤崎 伸太, 安芸 雅史, 香川 征
    1992 年25 巻9 号 p. 1068-1072
    発行日: 1992/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    我々は, 上気道感染の発症後, 約1週間の後に, 溶血性貧血・血小板減少・無尿を呈した7歳および6歳の溶血性尿毒症性症候群の2女児を経験した. 最初の症例に対してはまず薬物療法としてUrokinase, Dipyridamole等の保存療法を一度は試みたが全く効果が得られないために持続腹膜透析continuous peritoneal dialysis (CPD) を施行し寛解を得た. 第2症例はこの経験を生かし直ちにCPDを行い極めて短期に腎不全状態より離脱し得た.
    抗血小板剤, 抗凝固剤およびステロイド剤などによる治療は腎不全の合併がなければ一応の効果は期待できるとされているが腎不全がすでに発症している場合は, 速やかな透析療法がその救命には重要である. その場合, 溶血性尿毒症性症候群は主に乳幼児に多発することからblood accessが困難なこと, 出血傾向が存在することなどから血液透析よりもCPDがより有効で安全であると考えられた.
  • 種々のアミロイド前駆蛋白の腎組織内検索
    加藤 謙吉, 伊藤 喜久, 浅野 泰
    1992 年25 巻9 号 p. 1073-1078
    発行日: 1992/09/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は, 55歳女性. 20年前発熱, 関節痛にて慢性関節リウマチと診断された. ここ2-3年の未治療期の後, 膝の痛みをきっかけに蛋白尿, 腎機能障害に気づいた. 腎機能障害は急速な進行を認め, 血清クレアチニン9mg/dlとなっていたものの開放下腎生検を行い, その後に血液透析へ導入となった. 腎生検の結果はコンゴーレッド陽性, 過マンガン酸カリ処理にて反応物質の陰性化を認め, AA型のアミロイドーシスが考えられた. さらに, 診断をより確実にするため血清アミロイドA蛋白 (SAA) の血中濃度を測定し (17μg/ml), さらにSAAのポリクローナル抗体を利用しPAP法を行い腎組織内 (糸球体, 血管壁を中心) にSAA陽性所見を得た. また, 同時にβ2-microglobulin, Light chain (κ, λ), P-component (以上PAP法), その他種々免疫グロブリン, 補体 (以上直接蛍光抗体法) 等の腎組織内局在を調べたがいずれも陰性であった. また, OKT4/OKT8比の上昇を認め細胞性免疫能の障害が今回のアミロイドーシス発症に関与していた可能性も考えられた. 今後本例に透析療法を行っていく上で生前確定診断が得られたことが出血等の合併症に対し適切な対応が可能になると思われた.
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