日本透析療法学会雑誌
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維持透析患者の虚血性末梢循環障害についての臨床的検討
阿岸 鉄三春口 洋昭北島 久視子佐藤 純彦太田 和夫
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1993 年 26 巻 10 号 p. 1579-1583

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抄録
維持透析患者に虚血性末梢循環障害の症状の見られることが多くなっている. 維持透析患者における死亡者の約半数が, 循環器障害によることからも伺えるように, 透析患者に特有の動脈硬化の進展が関係するものと考えられる. 従って, これらの患者の臨床的検討が病態の把握のために有用であると考えられた.
末梢循環障害と診断した20名のうち, 下肢閉塞性動脈硬化症 (ASO) は12名, steal症候群は11名, 併発は3名であった.
病態発現の危険因子としては, 性: 男性11・女性9, 年齢>65歳: 7/20, 慢性腎不全: 20/20, 異脂血症: 6/20, 糖尿病: 7/20, 重複シャント: 4/20, 凝固能亢進: 8/8 (測定した例中), 線溶能亢進: 4/7 (測定した例中) が考えられた.
臨床症状による重症度分類では, ASO患者数においては, Fontaine I度: 1, II度: 5, III度: 2, IV度: 4であった. Steal症候群においては, Fontaine分類を準用すると, 1度: 1, II度: 3, III度: 7, IV度: 0であった. Steal症候群は, 動脈硬化症が末梢に存在するときに動静脈瘻を形成することで発症しやすくなると考えられた.
検査としては, ASOに対してはankle pressure indexが診断に有用であった. また, サーモグラフィ, 容積指尖脈波測定, 血管造影法, MRIが有用であった. とくに, steal症候群の診断には, 自然な血行状態を描出するDSAで血管造影を行うべきであると考えられた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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