日本透析療法学会雑誌
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両下腿切断および左第4指に壊疽を生じた糖尿病性腎不全の1例
宮前 至博馬場園 哲也有井 浩子新城 孝道大森 安恵
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1993 年 26 巻 10 号 p. 1627-1631

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抄録
透析療法中の糖尿病患者の合併症の一つとして壊疽が新たな問題となっている. 長期糖尿病罹患後, 両下腿を壊疽のため切断され, さらに手指に壊疽を生じた症例を報告する. 症例は, 58歳男性, 37歳で糖尿病と診断され, 57歳で血液透析に導入. その後足壊疽のため両下腿切断された後, 左第4指に壊疽を生じた. 手指壊疽の原因は, 糖尿病および末期腎不全に伴う高度の動脈硬化を基盤とし, さらにshunt steal syndromeが誘因となったと考えられた. 本症例では, 壊疽部の消毒, 手指のマッサージ, 保温, 運動に加え, プロスタグランディンE1 (PGE1) の静注等の内科的治療により約10か月後に治癒し得た. 糖尿病性末期腎不全による長期血液透析患者においては, 下肢の壊疽だけでなく, 上肢の壊疽に対しても, その予防, 早期治療が重要であると考えられた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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