抄録
慢性透析患者における出産の1例を経験したので, 報告する.
症例は23歳の女性. 透析歴7年, 妊娠20週に子癇発作と思われる痙攣発作を起こし (この時, 血圧240mmHg/140mmHg), 以後入院の上管理された. 子宮内胎児発育遅延 (IUGR) の進行のため, 34週で帝王切開にて, 870gの女児を出産した. 児はApgar score 8-10, 奇形等はなかった.
慢性透析患者の出産例の合併症としては, 切迫流早産, 羊水過多, 肝障害, 弛緩出血が多く報告されており, これら合併症の治療, 予防に細心の注意を払わねばならない. さらに, BUN≦60mg/dlに保つべく, 頻回の透析を行うこと, Ht 30%以上を目標にrh-EPOにより貧血の改善を行うことが大切である.