日本透析療法学会雑誌
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脊髄損傷透析患者の臨床的検討
伊藤 恭彦鈴木 高志水野 正司森田 良樹市田 静憲宮川 幸一郎松尾 清一
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1993 年 26 巻 12 号 p. 1745-1750

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抄録
脊髄損傷 (脊損) 患者にとって腎障害は致命的な合併症であり重要な問題のひとつである. 今回, 脊損腎不全患者8名における腎不全の特徴, 透析上の問題点を検討した.
透析導入までの期間は, 16.4年であった. 導入時平均クレアチニン値は7.2±2.5mg/dlと低値でありクレアチニンクリアランスとの解離を認める症例が存在し, 導入時期決定に注意を要する. 導入時HCO3-は平均10.9mEq/l, Naは122.1mEq/lと高度の体液異常を認めることが特徴である. 導入理由として消化器症状が全例に, 高度体液異常を5例に, 心不全を3例に認め, 緊急導入となることが多い. 導入前後を通じて褥創手術を5名が経験しており, 3例は菌血症に陥っている. 導入期に肺炎を2名が併発しており尿路感染症とともに感染症対策が重要である. 導入期は, 体液異常, 感染症, 栄養不良等の理由から死亡率が高く導入期はより慎重な対応が必要となる. VURは2例3腎に見るのみであったが, 水腎は6例11腎に認めた. 神経因性膀胱による尿路障害とこれに伴う尿路感染症が脊髄損傷, 慢性腎不全の原因・増悪因子となるが, 全例に蛋白尿を認め糸球体障害の合併が疑われ, 剖検例ではVURの有無にかかわらず巣状糸球体硬化病変を認めた.
脊髄損傷腎不全患者は特異な疾患群といえこれらの特徴を認識して対応する必要がある.
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© 社団法人 日本透析医学会
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