日本透析療法学会雑誌
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16年間の長期透析後に出血傾向を出現し, AL型全身性アミロイドーシスを合併した1例
石松 隆子栄本 忠俊橋本 淳進藤 亨平野 宏大澤 源吾
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1993 年 26 巻 12 号 p. 1811-1815

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抄録

止血困難を主訴とし, びまん性骨髄腫および全身性アミロイドーシスの合併を認めた長期透析患者の1例を報告した. 40歳の男性. 1972年, 慢性糸球体腎炎による慢性腎不全のため血液透析を開始した. 1988年8月頃より誘因なく全身に紫斑, 歯肉出血等の出血症状が出現し, 1989年4月入院す. 血小板数10.1万/μl, 血小板凝集能および粘着能が著しく低下. 血清の高IgA値 (1,148mg/dl) と免疫電気泳動にてIgAλにM-bowを認め, 骨髄腫を疑った. 出血傾向に対して無ヘパリン透析および血漿交換療法を施行したが改善せず, 上部消化管出血も併発した. 骨髄腫に準じて化学療法 (cyclophosphamide, vincristine) を施行したが効果なく肝不全に陥り同年6月死亡した.
剖検では全身性にAL型アミロイドの沈着が証明され, 骨髄は多発性骨髄腫に特徴的な形質細胞の結節性増殖は明らかではなく, 軽度異型性を持つ形質細胞がびまん性に浸潤していた.
出血傾向の原因は, アミロイド物質の血管への沈着による血管支持組織の脆弱化によると思われる.

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