日本透析療法学会雑誌
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透析患者の滑液包炎の臨床病理学的検討
滑液包の滑膜アミロイド沈着症
平野 宏加藤 博孝丹田 信也徐 義之野村 信介栄本 忠俊松谷 拓郎大沢 源吾
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1993 年 26 巻 3 号 p. 333-338

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抄録
長期血液透析患者に合併した, 滑液包炎15例の臨床病理学的検討を行った. 男性8例, 女性7例. 平均年齢54±7歳. 平均透析歴12±3年. 滑液包炎の罹患部位は, 股関節部4例, 足関節部3例, 手関節部3例, 肘関節部3例, 肩関節部1例, 膝関節部1例であった. それぞれの関節周囲部の腫脹 (腫瘤あるいは嚢腫形成) と発赤, 疼痛を訴えた. 腫脹部の超音波, CT, MRI所見では, 関節腔とは明らかに離れた滑液包の嚢腫状拡張が証明された. 発熱等の全身症状を訴える患者はいなかった. 11例が手根管症候群を合併し, 手根管開放術を施行した. 4例では罹患部近傍の骨嚢腫 (bone cyst) の所見がみられ, 3例では皮下の腫瘤形成型の石灰沈着がみられた. 滑液包の炎症細胞浸潤, 線維性結合織の肥厚がみられ, 滑膜下結合織と骨膜にβ2-MGアミロイド沈着がみられた. 滑液包と骨嚢胞の骨膜が癒着し, 骨壊死所見を認める症例もあった. 穿刺液は淡黄色, 透明, 粘稠な滑液で, カルシウム塩の結晶を認める症例もあった, 遊離細胞の電顕観察で, アミロイド線維が証明された. 一般細菌, 真菌, 結核菌の培養はいずれも陰性であった. 長期透析患者に合併した滑液包炎は, 滑膜にβ2-MGアミロイド線維の沈着を認めたことより透析アミロイド症の一つと考えられた. この滑液包炎は, 骨嚢腫や腫瘤状石灰沈着との関連性も推測された. 今後, 透析患者の訴える関節痛の中には, 滑液包炎の存在も考慮しなければならないと考えられた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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