抄録
慢性腎不全血液透析患者において, 血圧の良好なコントロールは長期予後に重要と考えられる. 我々は今回, 選択的なα1遮断薬である塩酸テラゾシン (TZ) の薬物動態を慢性血液透析患者において検討した. 6例の患者について透析日, 非透析日にTZ 0.5mgを単回投与し薬物動態を評価した. さらに4例の患者についてTZ 0.5mgを1日2回28日間連続投与し血漿中濃度の推移を測定した.
単回投与による, 最高血漿中濃度は14.2ng/ml, 最高血漿中濃度到達時間は3.3時間, β相の除去半減期は12.7時間であった. TZの薬物動態に, 透析日, 非透析日の差は認められなかった. また, TZのダイアライザーからの除去率 (4.3±2.7%) は低く, 透析排液中にもTZは検出されなかった.
一方, TZ連続投与後, 血漿中濃度は1週間で定常状態に達し, 最低血漿中濃度は16.0-19.4ng/ml, 最高血漿中濃度は23.2-30.6ng/mlを示した. 透析患老に対しての連続投与において, TZには蓄積性が認められなかった.
以上の結果から, 透析患者において塩酸テラゾシンは用量の調整をする必要がなく安全に使用し得る降圧薬と考えられた.