抄録
血液透析中の透析回路による細胞活性化に, 抗凝固薬が及ぼす影響について検討した. 対象は慢性腎不全の維持透析患者9例. 透析にはクプロファン膜を使用し, 透析開始時 (Pre) と, 15ないし120分後の透析回路動脈側 (A), 静脈側 (V) から採血し血中ベータトロンボグロブリン (βTG), 血小板第4因子 (PF4), 顆粒球エラスターゼ (PMNe), C3aを測定した. ヘパリン透析時とメシル酸ナファモスタット (FUT) 透析時との間で比較した. V-A差でみるとβTGはヘパリン透析時584±233 (ng/ml, M±SE) がFUT透析時207±175, PF4はヘパリン231±65(ng/ml), FUT 59±46といずれもヘパリン透析時にFUT透析時よりも有意に大きかった (p<0.05). βTGについてはV-Pre間差もヘパリン透析でFUT透析より有意に大であった (P<0.05). C3aとPMNeは透析に伴う上昇がみられたが, 抗凝固薬間の差はなかった. βTGの変化からヘパリン透析時の血小板活性化の亢進が示唆された. C3aとPMNeの変化からはFUTの用量が補体や白血球の活性化を抑制するのに不十分である可能性が考えられた. これらの結果は, 血液細胞と透析回路間の反応に対する抗凝固薬の関与を示している.