抄録
透析療法に導入した慢性腎不全患者6例および透析導入前の慢性腎不全患者2例を対象とし, 133Xeガス吸入法を用いて局所脳血流量 (regional cerebral blood flow: rCBF) 測定を行った. 透析導入前の全脳の平均CBFは79.7±6.0ml/100g/minと著明に増加していた (p<0.001). 透析導入後十分な透析を行った群では63.0±8.7ml/100g/minと有意に低下し (p<0.05) ほぼ正常化したのに対し, 透析が不十分な症例では透析導入前後で変化しなかった. 十分な透析を行った群において, 透析導入前後の収縮期および拡張期血圧, PaCO2, CTRには有意差はなく, 全脳の平均脳血流量との間に相関を認めなかった. 一方Hbは透析導入前後で有意な増加を認め (p<0.05), 全脳の平均脳血流量との間に負の相関を認めた (p<0.05). 透析療法導入後に脳血流量が正常化することに対し, 貧血の改善が大きな役割を果たしていると考えられた. 内シャント作製前後では全脳, 右半球および左半球の平均脳血流量, 左右差指数はほとんど変化せず, 局所的な脳血流量の変化も認められなかった.