日本透析医学会雑誌
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慢性血液透析患者における腎性貧血の検討
特にトランスフェリン飽和度とKt/V, protein catabolic rate (PCR) の関係について
高須 伸治藤井 正司畑村 東一笹原 恭一
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1994 年 27 巻 11 号 p. 1379-1383

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抄録
慢性維持透析患者の腎性貧血は, 内因性エリスロポエチンの欠乏が主因であるが, このほかに, 鉄欠乏, 透析量の不足, 蛋白摂取量の不足などもその一因である. また鉄代謝と栄養状態とは密接な関係にあり, 透析患者における栄養状態はurea kineticsより算出されるため, 今回我々は, recombinant human erythropoietin (rHuEPO) 投与非投与にかかわらずすべての慢性維持透析患者について, 各種鉄代謝の指標とKt/V, PCRについて検討した. 慢性維持透析患者121名 (男性63名, 女性58名) を対象とし, 鉄代謝の指標として, 血清鉄 (Fe), フェリチン (Frt), total iron binding capacity (TIBC), トランスフェリン飽和度 (%Tf) を, urea kineticsよりKt/V, PCRを算出した. 全症例を以下の3群に分類した: 1群 鉄欠乏なし群 (Frt≧50ng/mlでかつ%Tf≧30%) 52名 (43.0%), 2群 絶対的鉄欠乏群 (Frt<50ng/ml) 37名 (30.6%), 3群 機能的鉄欠乏群 (%Tf<30%かつFrt≧50ng/ml) 32名 (26.4%). 各群の平均ヘマトクリット (Ht) は, 1群24.4±4.0%, 2群27.7±5.0%, 3群23.8±4.3%であり, 2群のHtは1群, 3群に比し有意に高値であった (p<0.001). つぎに, urea kineticsについて検討すると, Kt/Vは平均1.17±0.15, PCRは平均1.08±0.27g/kg/dayでありKt/V, PCRともに各群間で有意差は認められなかった. 鉄代謝とurea kineticsの関係をみると, 全症例と鉄欠乏なし群において, %TfはPCRと有意な負の相関関係が認められた (p<0.05). 一般に, %Tfはトランスフェリンに逆比例し, Feに比例することが知られている. これより, 蛋白摂取量が低下し低栄養状態となると, Tfが低下し%Tfはこれと逆比例するため上昇する. つまり, 蛋白摂取量が低下している症例では, %Tfが上昇し造血に向かっていることが示唆された.
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