日本透析医学会雑誌
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27 巻, 11 号
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  • 亀山 正邦, 阪口 勝彦, 西中 和人, 辻村 崇浩, 宇高 不可思, 伏見 尚子
    1994 年 27 巻 11 号 p. 1363-1371
    発行日: 1994/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    Recently, the age of patients receiving chronic hemodialysis has markedly increased and diabetic nephropathy in aged subjects is often induced by dialysis. Consequently, many aspects of the patterns and features of cerebrovascular diseases complicated by dialysis are changing.
    1. Cerebral hemorrhage in chronic dialysis patients are more frequent and more severer than in non-dialysis subjects or the general population. Subcortical hemorrhage, is more frequently seen in dialytics, the cause of which is unknown. However, in aged persons, amyloid degeneration of the cerebral arteries is common, so cerebral hemorrhage due to amyloid angiopathy must be cautiously checked, although we have no clinical method of detecting amyloid angiopathy in daily practices.
    The incidence of cerebral hemorrhage in dialytics has decreased in recent years, perhaps due to effective control of hypertension and improvement of dialysis techniques, but the frequency of cerebral infarction may increase again. Pathogenesis of cerebral hemorrhage in dialytics is discussed.
    2. In a cranial MRI study on 71 dialysis patients without cerebrovascular signs and symptoms, ischemic changes were classified into cerebral white matter lesions, lacunes and brain stem infarctions.
    a) Ischemic brain changes on MRI were found in 38 subjects (53.5%), but cerebral hemorrhage was found in only 1 patient (1.4%). In the remaining 32 (45.1%), there were no abnormal images. Ischemic lesions on MRI were found more than half of the dialysis subjects and increased with advancing age; above 70 years of age, practically all patients showed ischemic changes on MRI imaging. The frequency of brainstem lesions showed no age-difference. Lacunes were reduced after middle-age, while cerebral white matter lesions increased linearly with advancing age. Although asymptomatic cerebral lesions were found in many of dialysis patients, whether they were really “asymptomatic” or not, is an important issue. Psychiatric evaluations are needed in dialysis patients, because depression or other psychiatric manifestations are not rare in these subjects.
    3. Six dialysis patients with cerebral hemorrhage or cerebral infarction verified on MRI and/or at autopsy are presented. A 47-year-old male patient with autosomal dominant polycystic kidney disease (PKD) showed a massive cerebral hemorrhage in the putaminal region. Intracranial aneurysms were not found in this patient. Genetic relationship in autosomal dominant PKD is discussed, especially in relation to collagen genes.
    4. Incidental cerebral aneurysms were found in 88 subjects aged sixty years or more among 1, 200 non-selected routine autopsies. Rupture occurred in 17% of all aneurysms, while fatal ruptures were found in 78% of aneurysms more than 6mm in diameter. MRI imaging is necessary in cases of dialysis to find silent cerebral aneurysms, the rupture of which may often be fatal.
    5. Subdural hematoma (SDH) are not rare in dialysis patients. We must remain alert to this disorder, because SDH is apt to be misinterpreted in dialysis patients.
    6. We propose that a liason of therapists including internal medicine, neurology, neurosurgery or orthopedics should be organized for prevention and management of cerebrovascular lesions in chronic dialysis.
  • 呉 幹純, 熊野 和雄, 酒井 糾
    1994 年 27 巻 11 号 p. 1373-1378
    発行日: 1994/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    ラット腹膜透析において種々の血管拡張剤を投与し腹膜透過能および腹腔内リンパ吸収に対する影響について調べた. 使用した薬剤は, ACE (angiotensin-converting-enzyme) 阻害剤としてcaptopril, Ca拮抗剤としてnicardipine, diltiazem, verapamil, α-遮断剤としてmoxisyliteである. 体重300g前後の正常な腎機能を有するSD系雄ラットをエーテル麻酔しブドウ糖濃度3.86%の高張透析液を腹腔内に注入し, 4時間貯留させた. 限外濾過量 (UFV), 経毛細管限外濾過量 (TCUF), 腹腔内リンパ吸収量 (LA), 尿素クリアランス (CLurea), 糖吸収量を測定した. captopril, nicardipine, diltiazem, verapamilでは腹膜透過能が亢進するためTCUFが低下し, LAも亢進することによってUFVは有意に低下した. 尿素クリアランスはすべての血管拡張剤で差を認めなかった. moxisyliteはUFV, TCUF, LA, 尿素クリアランス, 糖吸収量すべてにおいて差を認めなかった. したがってACE阻害剤, Ca拮抗剤はTCUFを低下させ, 腹腔内リンパ吸収を亢進させるが, α-遮断剤は限外濾過能, 腹腔内リンパ吸収能に影響を及ぼさない. CAPD患者においても降圧剤を使用している場合は腹膜機能および腹腔内リンパ吸収に及ぼす影響について考慮をする必要があると思われる.
  • 特にトランスフェリン飽和度とKt/V, protein catabolic rate (PCR) の関係について
    高須 伸治, 藤井 正司, 畑村 東一, 笹原 恭一
    1994 年 27 巻 11 号 p. 1379-1383
    発行日: 1994/11/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    慢性維持透析患者の腎性貧血は, 内因性エリスロポエチンの欠乏が主因であるが, このほかに, 鉄欠乏, 透析量の不足, 蛋白摂取量の不足などもその一因である. また鉄代謝と栄養状態とは密接な関係にあり, 透析患者における栄養状態はurea kineticsより算出されるため, 今回我々は, recombinant human erythropoietin (rHuEPO) 投与非投与にかかわらずすべての慢性維持透析患者について, 各種鉄代謝の指標とKt/V, PCRについて検討した. 慢性維持透析患者121名 (男性63名, 女性58名) を対象とし, 鉄代謝の指標として, 血清鉄 (Fe), フェリチン (Frt), total iron binding capacity (TIBC), トランスフェリン飽和度 (%Tf) を, urea kineticsよりKt/V, PCRを算出した. 全症例を以下の3群に分類した: 1群 鉄欠乏なし群 (Frt≧50ng/mlでかつ%Tf≧30%) 52名 (43.0%), 2群 絶対的鉄欠乏群 (Frt<50ng/ml) 37名 (30.6%), 3群 機能的鉄欠乏群 (%Tf<30%かつFrt≧50ng/ml) 32名 (26.4%). 各群の平均ヘマトクリット (Ht) は, 1群24.4±4.0%, 2群27.7±5.0%, 3群23.8±4.3%であり, 2群のHtは1群, 3群に比し有意に高値であった (p<0.001). つぎに, urea kineticsについて検討すると, Kt/Vは平均1.17±0.15, PCRは平均1.08±0.27g/kg/dayでありKt/V, PCRともに各群間で有意差は認められなかった. 鉄代謝とurea kineticsの関係をみると, 全症例と鉄欠乏なし群において, %TfはPCRと有意な負の相関関係が認められた (p<0.05). 一般に, %Tfはトランスフェリンに逆比例し, Feに比例することが知られている. これより, 蛋白摂取量が低下し低栄養状態となると, Tfが低下し%Tfはこれと逆比例するため上昇する. つまり, 蛋白摂取量が低下している症例では, %Tfが上昇し造血に向かっていることが示唆された.
  • 安村 忠樹, 中井 一郎, 吉村 了勇, 大森 吉弘, 岡 隆宏
    1994 年 27 巻 11 号 p. 1385-1389
    発行日: 1994/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    腎移植後に発症する慢性肝機能障害は, 主にウイルス性肝炎によるものであり, 高頻度に発症する. これに関連する死亡は, 肝不全10例, 肝不全と感染症の合併2例, 肝不全と心筋梗塞の合併1例, 肝癌4例の計17例で, 移植腎生着中死亡49例のうち34.7%を占める. ウイルス性肝炎のうち, B型肝炎の比率は減少したが, C型肝炎は依然高率に発症する. そこで腎移植後における感染率, 感染時期について検討した. 移植腎生着中の198例のうち, HCV抗体陽性例は37例 (18.7%) であり, HCV抗体のみ陽性であった34例中17例 (50.0%) に遷延するALT異常を認めた. HCV抗体陽性例と陰性例との間で臨床経過を比較すると, 陽性例では移植前, 移植後ともに高率にALT異常を認めており, 平均透析期間が有意に長く, 輸血量も有意に多かった. また男女比, 平均年齢, 移植後の輸血量には差は認めなかった. 移植前の輸血量および透析期間についてはHCV抗体陽性率との間に相関関係が認められた. 移植時期別にHCV抗体陽性率を見ると, 年次推移による変化は認めなかったが, 透析導入時期別に見ると1991年以降の患者ではHCV抗体陽性率は急速に低下し0%となった. これらの結果より, 腎移植患者におけるHCV感染は主に移植前の透析中あるいはそれ以前に起こっており, 今後新たに透析に導入される患者におけるHCV抗体の陽性化は少ないと推測されるが, 現在, HCV抗体陽性の腎移植希望者も多く, HCVに対する早急な対策が必要である.
  • 原液型とドライ型において
    吉村 勲, 友田 泰行, 田中 寛
    1994 年 27 巻 11 号 p. 1391-1395
    発行日: 1994/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    糖加重炭酸型透析液の2剤濃縮液型 (原液型) と2剤ドライ型 (ドライ型, 自動溶解希釈装置を使用) との2種類の薬剤を用いた時の透析液作業 (運搬, 透析液調製, 空容器搬出) を, 人間工学的に比較検討した. 対象は1日に原液使用量55セットを使用する腎臓病センター (透析用ベッド93床, 透析患者280例) で働く臨床工学技士5名とした.
    ドライ型の使用量は原液型に比し重量で1/6.7, 容積で1/3.5であった. 臨床工学技士の一日の作業時間を100%とした時の実作業時間は85.9%であり, そのうち透析液作業時間は原液型23.1%, ドライ型6.0%であった. そして, その時の運搬移動距離でも原液型928m, ドライ型263mとドライ型の優位点が示された. 身体への負荷に関する比較では, 透析液作業中の8工程で, 原液型での心拍数がドライ型でのそれに比し有意に高値であった. 以上より, 原液型での透析医療作業の阻害の程度が明らかとなり, ドライ型によるそれらの軽減効果が期待された.
  • 長谷川 友紀, 前田 祐子
    1994 年 27 巻 11 号 p. 1397-1401
    発行日: 1994/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    わが国の末期腎不全治療においては患者の大多数は慢性透析で治療され, 腎臓移植を受けるのはごく少数である. 従来死体腎提供数の不足がその理由とされてきたが, 慢性透析患者のうち死体腎移植を希望する割合も米国などと比較して少ない. 1) わが国においてはどのような理由で末期腎不全の治療に死体腎移植を希望するものが少ないのか, 2) また治療方針の選択は十分な情報に基づいた合理的な判断に基づいて行われているか, を明らかにする目的で, 首都圏の4病院の慢性透析患者588人を対象に自記式調査票調査を行った. 回答率は80.6%, 回答者の性別は男60.9%, 平均年齢は54.2歳, 平均透析期間は7.1年であった. 死体腎移植希望登録を行っているものは12.6%, 将来登録を希望するもの18.4%, 希望しないもの69.0%であった. 希望しないものは, 他と比較して, 有意に年齢が高く, 男性が少なく, 職を有しない割合が高かった. 死体腎移植を希望しない理由としては, 「年齢, 体力的理由」, 「登録しても腎臓の提供を受ける見込みが少ない」, 「移植しても腎臓がそれほど永く機能しない」の順に多く挙げられた. また回答者の多くは死体腎移植の成績を過小評価しており, 登録制度が必ずしも周知されていないことが示された. 多重ロジステック回帰分析では死体腎移植希望登録を行っているものは, 性別では男性, また移植1年後の生着率を高く評価するものに多いことが示された. 末期腎不全患者が治療方針について合理的な選択を可能にするためには, 医療機関を介した適切な情報の提供が不可欠であると思われる.
  • 横山 仁美, 野口 享秀, 田中 孜, 栗山 逸子, 上野 勝己, 瀬川 知則, 青山 琢磨, 服部 有博, 金 俊哉, 国島 明久, 森 ...
    1994 年 27 巻 11 号 p. 1403-1409
    発行日: 1994/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    当院における維持血液透析患者59名 (男性32名, 女性27名, 平均年齢60.7歳, 平均透析期間4.9年) のHCV-RNAおよびそのgenotype, HCV抗体 (第二世代抗体, C100-3抗体, N14抗体, GOR抗体) を測定し, 年齢, 性, 基礎疾患, 透析歴, 輸血歴, 手術歴, 家族歴, 肝疾患の既往, 肝障害の有無, HBc抗体との関連について多変量解析を用いて検討した. HCV-RNA陽性率は初回測定では20.3% (12/59), 第二世代抗体陽性率は45.8% (27/59), C100-3抗体陽性率は16.9% (10/59), N14抗体陽性率は30.5% (18/59), GOR抗体陽性率は25.4% (15/59) であった. HCV-RNA陽性者はすべて第二世代抗体陽性であったが, その他の抗体は必ずしも陽性を示さなかったことより, HCV感染のスクリーニングには第二世代抗体が最も適切であると考えられた.
    また, このうち37名において6か月後に第二世代抗体とHCV-RNAの再検査を行ったところ, 第二世代抗体陽性, HCV-RNA陰性であった5名のHCV-RNAが陽性化し, HCV-RNAは時期をおいて複数回測定することが望ましいと考えられた. さらに, 第二世代抗体, HCV-RNAともに陰性より両指標とも陽性化を認め, 新規感染を疑わせる1例を経験した. この時点におけるHCV-RNA陽性者は17名であり, このうち測定し得たgenotypeはII型が12例, II+III型が1例, III型が2例であった.
    第二世代抗体陽性者は90%以上に輸血歴を認め, 透析期間も抗体陰性者に比して有意に長期であったが過去6か月間のGPT異常の頻度には有意差を認めなかった. 第二世代抗体陽性に関する多重ロジスチックモデルを用いた多変量解析では第一に透析歴が, 第二に輸血歴が有意に関与していた.
    以上から, 第二世代抗体によるスクリーニングおよびより注意深い観血的操作により, 水平感染を予防する必要があると考えられた.
  • 宇都宮 正範, 太田 真, 佐藤 成明, 田中 博, 重松 隆, 杉本 健一, 田村 忠司, 小野 益照, 斎藤 広重, 岡田 秀雄, 川口 ...
    1994 年 27 巻 11 号 p. 1411-1416
    発行日: 1994/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    維持透析患者において冠動脈造影所見をもとに冠動脈狭窄と冠動脈石灰化について, その頻度と影響因子を非透析患者をコントロールとして比較検討した.
    虚血性心疾患が疑われ冠動脈造影を施行した維持透析患者 (透析群) 14名を対象とし, 血液透析 (HD群) が8名, 腹膜透析 (CAPD群) が6名であった. 同様に冠動脈造影を施行され, 年齢と性別に透析群と有意差のない腎機能正常例14名を選択しコントロール群とした. 冠動脈狭窄は有意病変枝数にて, 冠動脈石灰化は石灰化スコアにて評価した.
    石灰化スコアは透析群が平均19.3でコントロール群の平均5.3に比べて有意に高値であり (p<0.002), 透析群の中では, HD群20.8とCAPD群17.3で透析法による差はなかった. 一方, 有意病変枝数は透析群とコントロール群の間には明らかな差はなかった. 透析群においては, 石灰化スコアは有意病変枝数と相関はなく, 透析期間との間に有意な相関関係 (r=0.62, p<0.03) を認めた. また, 石灰化スコアと年齢の間には有意な相関は認めなかった.
    以上より維持透析患者では, 腎機能正常例とは異なり冠動脈狭窄と冠動脈石灰化は必ずしも平行せず, 冠動脈石灰化の出現頻度は透析期間に依存していることが明らかとなった.
  • 安藤 亮一, 秋葉 隆, 戸村 成男, 土肥 まゆみ, 千田 佳子, 井田 隆, 丸茂 文昭
    1994 年 27 巻 11 号 p. 1417-1421
    発行日: 1994/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    最近, HPLCを必要としない, 簡易カラム法による血清1,25(OH)2D濃度測定が可能となったが, 腎不全患者, 透析患者における詳細な検討はなされていない. 今回, 血液透析患者 (HD) 48例において, この方法により, 血清1,25(OH)2D濃度を測定し, その臨床的有用性について検討した. HPLC法と簡易カラム法による血清1,25(OH)2D濃度はr=0.72 (p<0.01) で両者の間に良好な正の相関関係を認めた. 血清1,25(OH)2D濃度は保存期腎不全群, 活性型ビタミンD非投与HD群, 活性型ビタミンD連日投与HD群, ビタミンD経口パルス療法中のHD群で, 正常群よりも有意な低値を示したが, 4群間には有意差を認めなかった. また, 血清1,25(OH)2D濃度は, 1α(OH)D 0.25μg/日投与HD群では, 非投与群と有意差を認めなかったが, 0.5μg/日投与HD群では, 非投与群よりも有意な高値を示した. 血清1,25(OH)2D濃度はintact-PTH, 血清P濃度, Al-pのいずれとも有意な相関関係を認めず, 血清Caとr=0.44 (p<0.01) で有意な正の相関関係を認めた.
    以上より, 簡易カラム法による血清1,25(OH)2D濃度の測定は, 従来のHPLC法に比して簡便であり, 透析患者の腎性骨異栄養症の病態の把握, 1α(OH)D3投与量の決定や治療効果の判定に有用である.
  • 丹波 嘉一郎, 草野 英二, 大高 亮彦, 桜井 俊宏, 本間 寿美子, 武藤 重明, 田部井 薫, 佐藤 宗勝, 澁澤 公行, 永井 秀雄 ...
    1994 年 27 巻 11 号 p. 1423-1427
    発行日: 1994/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    2例のcontinuous ambulatory peritoneal dialysis (CAPD) 患者に, 腹部大手術が行われ, 術後もCAPDの継続が可能であった. 1例目は, 膵頭部腫瘤で, 上腹部横切開, 膵頭部切除, 膵胃吻合を行い網嚢を閉鎖腔とした. 2例目は, 胃角部早期胃癌で, 上腹部を横切開し, 横行結腸下腔の操作を行わず, 胃亜全摘術を行った. 2症例とも術後のCAPDに支障はなく, weekly creatinine clearance (WCCr) は50l/週以上を保った. 術式の工夫もさることながら, 腹部大手術後でも, 感染, 癒着等の合併症がなければ, 腹膜機能への影響は少なく, CAPD継続の可能性が示唆された.
  • 伊藤 正典, 黒田 昌宏, 畠山 收一, 伊藤 利之, 北野 博嗣, 泊 康男
    1994 年 27 巻 11 号 p. 1429-1433
    発行日: 1994/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析患者に合併した非外傷性の脾被膜下血腫の1例を経験したので報告する. 症例は, 透析歴2年の61歳, 女性. 下腹部痛を訴え, CT検査にて脾被膜下血腫と診断した. 経過中, 貧血の増悪をみたが, 保存的加療のみで血腫は縮小した. 外傷の既往および, 血腫を生ずる明らかな原因疾患は存在せず, 特発性に生じた脾被膜下血腫と考えられた. 透析患者の腹痛の原因には, 多くの疾患があげられるが, 本症も鑑別診断のひとつとして認識する必要があると思われた.
  • 大塚 徳明, 酒見 隆信, 池田 裕次, 長野 善朗, 庄野 義幸
    1994 年 27 巻 11 号 p. 1435-1439
    発行日: 1994/11/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    CAPD患者で胸壁冷膿瘍を伴う結核性胸膜炎を発症し, 抗結核薬による保存的療法にて治癒した症例を経験したので報告する. 症例はCAPD導入後2年半になる62歳の女性. 平成3年8月末より発熱, 乾性の咳, 左胸痛が出現し, 近医にて抗生物質投与されるも症状軽快しないため当科紹介となった. 胸水穿刺により結核性胸膜炎が疑われ, 外来にて抗結核薬, isoniazid (INH), rifampicin (RFP), ethambutol (EB) の3剤併用が開始されたが, 発熱持続し, さらに胸壁冷膿瘍を生じたため入院となった. 入院後streptomycin (SM) を加え4剤併用を始めたところ, 症状改善し, 約4か月後に退院となった.
    CAPD患者で, 胸壁冷膿瘍を伴う結核性胸膜炎の発症は稀であると考えられ, その治療法としては外科的切除が基本となっているが, 本症例により, 適切な抗結核薬による保存的療法のみで治癒できる可能性が示唆された.
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