日本透析医学会雑誌
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エリスロポエチン (r-HuEPO) 投与による血圧上昇反応とその原因 左室後負荷との関係
皆川 太郎大熊 俊男後藤 尚己操 潤井上 清明石黒 源之高田 信幸平野 高弘森 甫
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1994 年 27 巻 12 号 p. 1457-1462

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抄録

エリスロポエチン (r-HuEPO) 投与時に生じる血圧上昇の原因についての明確な結論は得られていない. そのため, 今回その原因に対して左室後負荷の面から検討を行った.
対象と方法: 対象は, Ht (ヘマトクリット値) が25%以下の腎性貧血を伴う維持透析患者16例 (男7例, 女9例). 平均年齢は62歳. 目標Htを30%としてr-HuEPOを経静脈的に投与した. r-HuEPO投与開始前と, 目標Htに達した後で血圧, 心拍数を計測し, 同時に断層心エコー検査を施行した. 平均血圧 (MBP) が10%を超えた症例を血圧上昇群 (I群), それ以外を非上昇群 (II群) として検討を行った. 結果: Htはほぼ全例で改善を示した (r-HuEPO投与前後で22.3±1.7%→29.6±5.1%: p<0.001). I群ではMBP, SBP (収縮期血圧), DBP (拡張期血圧) ともに有意に増加し, CO (心拍出量) は有意に減少した. また, TPR (総末梢血管抵抗), ESWS (収縮末期左室壁応力) は有意な増加を示した. II群では, MBP, SBPは減少傾向を示したものの, COは変化を示さずTPR, ESWSが減少傾向を示した. 一方, r-HuEPO投与前後でのMBPの差 (ΔMBP) とTPRの差 (ΔTPR) との間にはr=0.85の正相関を認めた. r-HuEPO投与によりMBPが上昇するI群のr-HuEPO投与前のCOはII群より高値 (7.9±1.0l/min vs 6.0±2.3l/min) であり, TPRは低値 (971.5±209.6dyne・sec・cm-5 vs 1,674.1±635.6dyne・sec・cm-5) であった. まとめ: r-HuEPO投与の際に生じる血圧上昇は末梢血管抵抗の上昇に伴うものと結論づけられたが, その上昇の程度はTPRの変化の程度に依存すると考えられる. TPRの上昇に伴いESWSも増加するが, これは左室肥大の進行への関与等, 長期投与における問題点になると思われる.

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