日本透析医学会雑誌
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超音波ドプラ法による糖尿病性末期腎不全患者における心機能評価
下肢挙上負荷前後での検討
田村 忠司太田 真副島 道正佐藤 成明杉本 健一田中 博宇都宮 正範小野 益照齊藤 広重岡田 秀雄川口 良人酒井 紀
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1994 年 27 巻 12 号 p. 1469-1474

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抄録

透析導入前の腎不全患者25例 (糖尿病群: 10例, 非糖尿病群: 15例) およびコントロール群15例を対象として, 前負荷増加前後で腎不全患者の心機能を評価し, 糖尿病性末期腎不全患者がうっ血性心不全を起こし易い原因を検討した. 下肢挙上負荷前後にて超音波パルスドプラ法を用い左室流入血流速波形を記録し, 拡張早期最大血流速 (E), 心房収縮期最大血流速 (A), A/EおよびEの1/2減衰時間 (DHT) を心機能評価の指標とした. 負荷前より腎不全の2群ではコントロール群に比しA/EおよびDHTともに有意に大で, 左室拡張機能障害を認めたが, 糖尿病群と非糖尿病群で有意差はなかった. 下肢挙上負荷後3群ともに前負荷増加を反映してEの有意な増加, DHTの有意な減少を認めた. コントロール群および非糖尿病群ではAの有意な増加を認めたが, 糖尿病群ではAは変化なかった. 以上より末期腎不全患者で一般に存在する左室拡張機能障害に加え, 糖尿病性末期腎不全患者では下肢挙上負荷により惹起された前負荷増加にて潜在性の左房ポンプ機能障害が顕性化した. この潜在性の左房機能障害が糖尿病性末期腎不全患者でうっ血性心不全をきたし易い-因と考えられた.

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