日本透析医学会雑誌
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短時間透析に関する研究 (第4報)
大孔径透析膜 (BK-F) の腎性貧血改善効果
栗山 哲友成 治夫宇都宮 保典小村 香與子四家 敏秀平野 景太酒井 紀
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1994 年 27 巻 12 号 p. 1483-1487

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抄録

短時間透析では高能率透析膜 (high performance membrane: HPM) ダイアライザーを必要とするが, 大孔径膜のHPMダイアライザーを用いた際, 一部の患者で腎性貧血の改善効果が報告されている. 本研究では短時間透析においてHPMダイアライザーに腎性貧血改善効果が認められるか否か, またHPMの種類により差異が認められるか否かをBK-F (polymethyl methacrylate: PMMA膜) とFB-U (cellurose triacetate: CTA膜) の二種類のダイアライザーで比較検討した.
安定した短時間透析 (HD) を受けている患者11名でダイアライザーをFB-UからBK-Fに変更し6か月間観察したところ, 11例中7例に5%以上のヘマトクリット値 (Ht) の上昇を認めた 〔平均上昇30.6±3.6%→36.2±4.3% (24週目), n=11 p<0.01〕. この観察期間中, エリスロポエチン (Epo) の需要量は逆に有意に低下した. 一方, 血清アルブミン (Alb) 濃度は有意に低下した (3.8±0.3mg/dl→3.4±0.4mg/dl, n=11 p<0.01), このBK-Fによる貧血改善効果は, ダイアライザーをBK-FからFB-Uにもどすことにより減弱した.
BK-Fに貧血改善効果やEpo節約効果が認められることは, 大孔径膜を有するある種のダイアライザーでは造血阻害因子を選択的に除去しうる可能性を示唆する. この作用はEpo節約効果に結びつくと考えられるが, BK-Fには同時に血清アルブミン濃度減少作用があることから, 本ダイアライザーを長期にわたる使用の際には患者の栄養状態などに十分な注意を要する.

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