日本透析医学会雑誌
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ブシラミンが有効であった維持透析中の慢性関節リウマチの1例
海津 嘉蔵小嶺 憲国瓜生 康平池田 匡儀橋本 修江藤 澄哉
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1994 年 27 巻 12 号 p. 1505-1510

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抄録

ブシラミンは, 日本で開発された遅効性抗リウマチ薬であるが, 腎排泄性であり腎不全症例への投与は禁忌とされてきた. 今回, 我々は維持透析へ導入後もコントロール困難な関節痛に悩む慢性関節リウマチの1症例に対し, 薬物動態を調べた上でブシラミンを投与し, 副作用なく良好な結果が得られたので報告する. 症例は56歳女性, 1967年慢性関節リウマチと診断された. 1984年蛋白尿・腎機能障害が出現, lip biopsyにてアミロイドーシスと診断された. 1985年維持透析へ導入となった. 1992年関節痛は増悪しステロイドホルモン・消炎鎮痛剤にてコントロール困難となった. QOLが障害されておりブシラミンの投与を考慮した. 投与にあたり, 非透析日と透析日の薬物動態を調べた. 非透析日には, ブシラミンの血中濃度半減期は健常人とほぼ同じであったが, 活性代謝産物 (SA981・SA679) の半減期は著しく延長していた (9.3時間, 24.4時間). 透析日ではブシラミンと活性代謝産物は透析性を有していた. 以上から, ブシラミンの投与量を透析日のみ透析後に100mgとした.
ブシラミン投与4週以降関節痛は著明に軽減, 他覚所見・炎症反応・Lansbury indexも改善した. 症状の改善に伴い階段昇降が可能になるなどQOLが改善した. 投与中副作用はみられなかった. 投与4・8・12・24週にブシラミンと代謝産物の血中濃度を調べたが蓄積性はなかった. 1例のみの経験であるが, 従来禁忌とされてきた高度腎不全患者においても, 薬物動態を調べた上で投与量を減量すればブシラミンは投与可能であり, さらに抗リウマチ作用が期待できると考えられた.

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