日本透析医学会雑誌
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血漿交換療法 (PE) を行い出産に成功した血栓性血小板減少性紫斑病の1例
滝下 佳寛高橋 弘子樋口 和彦浜田 信一高野 尚之
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1994 年 27 巻 2 号 p. 141-144

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抄録

血栓性血小板減少性紫斑病 (TTP), 特に妊娠に伴ったTTPの予後は非常に悪いことが知られている. しかし近年, 血液浄化法なかでもplasma exchange (PE) によりTTPの予後は著しく改善されている. しかし, まだTTP患者での出産成功例はごくわずかである. 今回, 我々はPEを行うことにより無事出産し得た1例を経験したので報告した.
症例は31歳, 1986年, 25歳の時初回妊娠22週で胎児死亡を機にTTPを発症. 人工流産, PEおよび摘脾にて軽快していた. その後しばしば血小板減少をきたすことがあったが新鮮凍結血漿 (FFP) の輸注で改善し, さらにその後は血小板数は安定し, しばらく来院していなかった. 1991年, 30歳, 来院時に妊娠6週で本人の強い希望もあり妊娠を継続. 1992年, 妊娠35週で血小板減少をきたし緊急入院となる. 入院時, 血小板数3.2万, Hb 10.4g/dl, LDH 2,330IU/l. FFPおよび新鮮血輸血にも拘わらず血小板数の増加がなく, Hb 8.6g/dlと貧血も増強のため, 血小板輸血とともにPEを施行した後, 帝王切開を行った. PEはFFP 40単位 (約3,200ml) を用い, 抗凝固剤にメシル酸ナファモスタットを使用, 血液透析も併用, さらに翌日および翌々日と合計3回行った. その結果, 血小板数は速やかに増加し, また新生児も健康で, 母子ともに順調に経過している.
今回の症例の経験からもPEを用いることにより, TTP患者においても無事出産し得ることが示された.

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