日本透析医学会雑誌
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高浸透圧性非ケトン性糖尿病性昏睡に, 横紋筋融解症 (Rhabdomyolysis) による急性腎不全を合併した1例
今村 吉彦中村 良一田村 光広原 久美子矢島 治夫山本 田力也長谷 弘記山口 徹
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1994 年 27 巻 5 号 p. 369-373

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抄録

高浸透圧性非ケトン性糖尿病性昏睡で入院し, 治療経過中に横紋筋融解症から急性腎不全にいたり, 血液透析療法により回復した興味ある症例を報告する.
症例は, 46歳男性で糖尿病の明らかな既往はなかった. 1993年2月ごろより感冒様症状出現. 3月上旬より口渇, 多飲, 多尿が続きその後異常行動出現し, 意識昏睡状態にて某院入院となる. 某院入院時, 血糖1,500mg/dl, 血清Na 151mEq/l, BUN 55mg/dl, Cr 1.9mg/dl, 尿中ケトン体1+, CPK 1,539単位と著明な高血糖, 脱水, 高Na血症およびCPK他筋逸脱酵素の上昇が認められた. 高浸透圧性非ケトン性糖尿病性昏睡の診断で輸液, インスリン療法を行い意識状態は回復したが, 腎機能が悪化したため本院転院となった. 本院入院時BUN 69.4mg/dl, Cr 6.8mg/dl, CCr 7ml/minと急性腎不全の状態で, CPK 53,400単位, LDH 2,203単位と著明高値を示し血中尿中ミオグロビンも著明に上昇していた. 血液透析療法を施行し腎機能は徐々に回復, 計7回で透析を離脱しその後腎機能は正常となった. 血糖も食事療法のみでコントロール可能となった. 本例はNIDDMが潜在的に存在し, 上気道炎を誘因に糖尿病性昏睡となり, さらに高血糖, 高浸透圧, 高Na血症, 脱水などが原因で横紋筋融解症を呈し急性腎不全となったと考えられた. 糖尿病性昏睡に合併した横紋筋融解症では, 浸透圧利尿のため急性腎不全になる症例は少ないが, 本例は腎機能の急激な悪化を認めたため速やかに血液透析療法を施行し, 腎機能の回復が得られたと考えられた.

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