日本透析医学会雑誌
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透析導入となった多発性嚢胞腎 (PCK) の臨床的検討
吉田 泉武田 茂幸宮田 幸雄雨宮 守正赤井 洋一古谷 裕章安藤 康宏武藤 重明田部井 薫草野 英二浅野 泰
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キーワード: 多発性嚢胞腎, 透析
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1995 年 28 巻 10 号 p. 1353-1358

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抄録

一般に, 多発性嚢胞腎 (PCK) 患者では腎機能低下速度や貧血の進行などが緩徐であるとされているが, その詳細は明らかではない. そこで, 我々はPCK患者の背景因子と腎機能低下速度との関連について検討した.
対象は, 当院で昭和50年1月から平成2年12月までに透析導入となったPCK患者26名 (男10名, 女16名). 血清クレアチニンの逆数 (1/Scr) の回帰係数を腎機能低下速度の指標とした腎機能の推移と臨床症状, 画像診断による腎の大きさ, 嚢胞の数, 嚢胞の腎組織全体での占有率との関連について検討した.
その結果, 臨床所見としては高血圧 (92.3%), 腹部腫瘤 (88.5%), 血尿 (65.4%), 肝嚢胞 (73.0%) などが高頻度に認められた. 腎機能悪化に伴うヘマトクリット (Ht) 値の低下はPCK以外の慢性腎不全とほぼ同様の推移を示した. 腎の大きさ, 嚢胞の占有率, 嚢胞の数と透析導入時年齢, 透析導入時Scr値, 透析導入時Ht値, 1/Scrの回帰係数との間には有意な相関関係は認められなかった. 1/Scrの回帰係数は年齢と負の相関を示した. すなわち透析導入となったPCK患者において腎機能低下速度は, 年齢が決定因子の一つであることが示唆された.

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