抄録
症例は透析歴12年の42歳の女性. 高度の二次性副甲状腺機能亢進症を合併し骨痛を強く訴えていた. 高アルカリフォスファターゼ血症, 副甲状腺腫大を伴っていたので副甲状腺の摘出術を勧めたが同意が得られなかったためビタミンD3のパルス療法を行ったが高カルシウム血症の出現で満足すべき結果は得られなかった. その後 “尿毒症性心筋症” によると思われる心不全が見られるようになり十分な透析 (除水) にも反応せず骨痛と呼吸困難で日常生活に著しい支障が見られるようになった. そこでメトプロロールの漸増投与と副甲状腺へのエコー下での少量頻回のethanol注入を行ったところ骨痛, 呼吸困難は消失し, 心臓の縮小と血中副甲状腺ホルモンならびにアルカリフォスファターゼ値の低下が見られ, QOLの著明な向上が見られた.
薬剤や十分な透析に反応しない心不全を合併する二次性副甲状腺機能亢進症で副甲状腺摘出術不能例もしくは手術を拒否する例では少量頻回のethanol注入とβ-blockerの併用療法は有用な方法と思われた.