1995 年 28 巻 2 号 p. 197-201
患者は61歳女性で慢性腎不全にて12年間血液透析療法を継続していた. 21歳時に肺結核と診断された既往あり. 特に咳や熱発などなく経過していたが, 溢水による急性肺水腫と肺炎にて当科を紹介され入院. 透析療法による除水とペニシリン系抗生物質にて数日で軽快した. 3年間に12kgの体重減少があり精査中, 左足背部蜂巣織炎を発症. X線撮影では左立方骨, 舟状骨, 3個の楔状骨に骨融解像を認めた. 膿より結核菌が証明され軟部組織に波及した足根骨結核と診断された. 胸部X線, CTでは活動性結核を疑う所見はなかったが, 頻回の喀痰培養にて少数ながら結核菌が検出されたため専門施設に転院した. 足根骨結核は非常に稀な病態で, これまで国内国外合わせて99例が報告されているにすぎない. 血液透析患者では結核の発症が多いとされるが, 足根骨結核の報告はないため我々の経験した症例を報告した.