日本透析医学会雑誌
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維持透析者のC型肝炎の実態と輸血外感染の可能性
市丸 喜一郎田中 孝夫村本 陽子天ヶ瀬 洋正
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1995 年 28 巻 9 号 p. 1245-1250

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抄録

維持透析者のC型肝炎の実態と透析施設内での輸血外感染の可能性について検討した.
対象はCAPD 6例を含む維持透析者264例と保存血清による検討の42例であった. HCV抗体 (抗体) 検出は第2世代のEIA法を, HCV-RNAおよびgenotype決定にはpolymerase chain reaction法を用いた.
維持透析者の抗体陽性率は25.8%, 抗体陽性例のRNA陽性率は61.8%, うちgenotype II型は73.8%であった. 透析期間別 (献血者の抗体検査導入時期) にみると, 透析1年未満群 (第2世代キット), 1-4年群 (第1世代キット) の抗体陽性率はそれぞれ19.5%, 20.0%と両群に差はみられず, その多くが透析導入前からの持ち込み症例と考えられた. また, 透析4年以上群 (肝機能チェック) との間にも有意の差はみられず, 透析15年以上の群との間にはそれぞれ有意の差がみられた (抗体陽性率46.9%). 抗体およびRNA陽性例の輸血既往率は各79.4%, 83.3%と極めて高かったが, 抗体陽性例の20.6%には輸血歴がなかった. 非輸血97例の14.4%は抗体陽性で, そのうちRNA陽性例はすべてgenotype II型であった.
保存血清による検討および1年間の観察では, 輸血既往のない症例の年間抗体陽転率は各0.3%, 1.1%/1人であった.
まとめ: 維持透析者のC型肝炎の罹患率が極めて高いことは透析導入前の持ち込み症例だけでなく, 献血時のチェック漏れや原因不明の輸血外感染の蓄積によるものと考えられ, その感染経路の解明と対策が急がれる.

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