1996 年 29 巻 2 号 p. 117-120
糖尿病性腎症による維持血液透析患者に脾梗塞を惹起した1症例を経験した.
症例は70歳男性. 1973年糖尿病を指摘され, 90年血液透析導入. 94年12月上旬より左上腹部痛出現し持続するため緊急入院した. 入院時左上腹部に圧痛あり. 腹部CTにて脾に楔状の低吸収域を認め脾動脈の著明な石灰化あり, 脾梗塞と診断した. 腹痛は約1週間持続したがその後軽快した. 本例では動脈硬化のプラーク巣より脾への塞栓が想定された. 動脈硬化の強い透析患者の左上腹部痛では脾梗塞も鑑別診断に入れるべきである.