日本透析医学会雑誌
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Mechanism of water and sodium removal in CAPD with low sodium dialysate (LNaD)
Takashi HoriuchiYasuhiro Sumida
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1996 年 29 巻 2 号 p. 87-96

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抄録

腹膜透析において低ナトリウム透析液を用いた際の臨床効果は, ナトリウムの除去を促進し, 結果として水の過剰を緩和できることであるが, そのメカニズムの解析, 総合的な評価は十分とはいえない.
低ナトリウムという非生理学的な組成を有する透析液を使用した際にどのような溶質移動および水移動が生ずるかを検討するために, 輸送モデルに基づいた計算機シミュレーションを行った. 本研究ではナトリウム, クロール, グルコースの物質移動面積係数として文献値8.3ml/min, 9.4ml/min, 10ml/minを利用し, 透析液のナトリウム濃度を76mEq/lから129mEq/lまで5種類の仮想的な透析液を想定して計算機による透析シミュレーションを行った.
血清ナトリウム濃度の減少は除水に極めて大きな影響を与え, 血清ナトリウム濃度135mEq/l-145mEq/lの間では血清ナトリウム濃度を1mEq/l低下することで6時間除水量を約22ml増加させることが示された. 一方, 透析液ナトリウム濃度の範囲76mEq/l-129mEq/lでは透析液ナトリウムの1mEq/lの減少当たり, 除水量が約2.3-0.5ml増加することが算出された. 標準透析液 (129mEq/l) ではナトリウム全除去量の20%が拡散移動であったのに対し, 低ナトリウム透析液 (102mEq/l) では41%とその占める割合が増加した. リンパ吸収による透析液から血液への移動は両者において同程度であった. 低ナトリウム透析においては拡散によるナトリウム移動が優位であること, ナトリウムの低移動性が除水を上昇させるのではないことが示された.

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© The Japanese Society for Dialysis Therapy
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