1996 年 29 巻 4 号 p. 321-326
慢性腎不全に悪性リンパ腫を合併し, 血液透析を施行しながら化学療法および放射線療法を施行し, 寛解した症例を経験したので報告する. 症例は67歳, 男性. 44歳時より高血圧, 63歳時より腎機能低下を指摘されていた. 1994年3月頃より腹痛が出現したため, 当科を受診した. 腹部に腫瘤を触知し, 画像検査で腹腔内の多数のリンパ節腫大を認めた. 開腹的リンパ節生検を施行した結果, 悪性リンパ腫 (diffuse large, immunoblastic B cell type) と診断した. 第1クール化学療法後より血液透析へ導入した. 化学療法によりリンパ節の縮小を認めたが, 計6クールの化学療法終了時点でリンパ節腫大の残存が疑われたため放射線療法を追加した. その後, リンパ腫の再発を認めず, 発症より1年7か月後の現在, 特に合併症を認めず, 維持血液透析を施行中である. 末期腎不全患者に発生した悪性リンパ腫の寛解例は稀であり, 貴重な症例と考えたため報告する.