日本透析医学会雑誌
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CAPD導入時に陰嚢腫大と陰茎浮腫を認めた1例
槙林 弘之郎藤原 佳典小松 武生金津 和郎
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キーワード: 陰嚢腫大, 陰茎浮腫
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1996 年 29 巻 9 号 p. 1287-1291

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抄録

症例は36歳の男性. IgA腎症から慢性腎不全となり, 1994年5月13日に血液透析導入となった. 患者の希望でCAPDに変更したが, そのコンディショニング中に陰嚢腫大と陰茎浮腫がみられた. 当初はカテーテル挿入部からの漏液によるものと考え, 2週間の経過観察後に再び, コンディショニングを行った. その結果, 陰嚢腫大はみられたが陰茎浮腫は認めなかった. peritoneoscrotogram (腹腔シンチグラム) を施行し, 腹腔内から右陰嚢部への連続したRI集積像を認め, 交通性の陰嚢水腫と診断した. 交通性の陰嚢水腫は外科的に根治術を行った.
術後, peritoneoscrotogramを施行したが, 右陰嚢部へのRI集積はみられず, 1.5%ブドウ糖加灌流液2,000mlを貯留させても陰嚢腫大はみられなかった. その後, CAPDを施行しているが, 特に問題は認めていない. CAPDの合併症で陰嚢腫大の報告例は少ないが, 腹膜鞘状突起の開存は成人男性剖検例の15-37%に認められる. このことはCAPDでみられる陰嚢腫大が解剖学的に稀な合併症でないと推察される. また, CAPD施行時に陰嚢腫大がみられた場合, peritoneoscrotogramは安全で比較的容易に施行でき, 診断や治療方法の検討, 手術部位の同定に有用な検査であった.

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