日本透析医学会雑誌
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末期腎不全で発見されたAlport症候群の1例
畑間 繁樹熊谷 晴光藤原 恵仲里 仁史藤島 正敏
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1996 年 29 巻 9 号 p. 1293-1298

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抄録

我々は末期腎不全で発見されたAlport症候群の1例を経験した. 症例は20歳, 男性で, 6歳のとき血尿を指摘され, 11歳より両側難聴が進行性に増悪した. 肺水腫, 高カリウム血症と高窒素血症のため当院紹介入院した. 入院時BUN 136.8mg/dl, 血清クレアチニン19.5mg/dlであった. ただちに間欠的腹膜透析を開始し, 尿毒症の治療を行った. 本例は定期的followを受けておらず, 腎サイズが比較的保たれていたため, 原因疾患検索のため経皮的腎生検を行った. 光顕では約8割の糸球体が硬化に陥っており, 間質に多数のfoam cellを認め, 電顕では糸球体基底膜の不規則な肥厚と層状断裂を認めたため, Alport症候群による末期腎不全と診断した. Alport症候群の病因遺伝子はIV型コラーゲンα5鎖の遺伝子 (COL4A5) 中に存在することが知られている. そこで, PCR-single strand conformation polymorphisms-銀染色法を用いて第47-51エクソンの変異を検討したが, 異常は認められなかった. また, 家系調査を行ったが明らかな遺伝を指摘できず, 散発例の可能性が高いと考えられた.
Juvenile型Alport症候群の散発例と考えられる1例を経験したが, 原因疾患の明らかでない尿毒症でも腎サイズが保たれている場合には腎生検は有用であると考えられた.

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